台長コラム ときどき土佐日記

2012年1月アーカイブ

第13回<前編> こうじ(詩人)→まこと(天文学者)

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まことさん、2012年になりました。
今年もよろしくお願いします。
 
本来なら、こうして年始の挨拶をすると気分が自然と新しくなり、気持ちを切り替ることができるのですが、どうにも今年はうまくいきません。

まことさんの日記にも書いてありましたが「2011年は終わらない」感じがあるのでしょう。
 
まことさんの日記に書いてあった「地球の時間」と「空っぽの言葉」というフレーズを、ずっと考えています。
 
震災でぼくたちが出会ってしまった時間、痛み、悲しみを想い続けること。
そして、あの時出会った時間の中で感じた、生きていること、本当の幸せ、を想い続けること。
 
いつか、ぼくたちの震災の向き合い方、ぼくたちにできることをお話したいです。
 
*
 
さて、前回に引き続き、月の話です。
 
12月のぼくの出番(ワンコイン・プラネタリウム)はまさに月食の日でした。
 
キラキラのみんなも含め、あの日はなんか、天文台全体のテンションが違っていたなぁー。
 
ぼくもとても興味があったので、天文台に残って見ていこうかなと、悩んだのですが、寒さに負けて帰りました。
 
家に帰って見ようと思ったのですが、ミルク(犬)とくっついていたら、いつの間にか寝てしまいました。
まことさんに謝ることではないのでしょうが(笑)なんか、、、すいません。
 
それにしても、月が欠けていくことを「食べる」という言葉で表すのは、面白いですよね。
これは日本ならではの表現なのでしょうか。
興味深いです...宇宙というレストラン。。。
(HPを見たら、今年のテーマはまさに「食」なんですね!)
 
今年は月と星をたくさん見たいと思っています。
 
最後に前回の続きの詩を載せます。
 

みちる月
 
落ちてくる雨と同じ数くらい
いろんな生き方があると知って
怖くなってきみに電話したのは
いつのことだったか
「これでも聴きなって」
レコードを貸してくれた
今でもよく思い出す
あのギターの音
空からこぼれるくらい
月が溢れて
きみは女性になっていった
一つあきらめるたびに
二つつながっていく言葉
歩くための灯りと靴下
ミルクと行こう
ラズもいる
サンちゃんも

(1月10日)

 

第13回<後編> まこと(天文学者)こうじ(詩人)


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こうじさん、月の詩をありがとう。

月の話題は尽きませんね。
昨年末の月食は残念でしたが、天文学の食は食物と違って、繰り返し見られますから次の機会をお楽しみに。

そういえば、1月27日(金)の夕方、日没後西の空に細い月と明るい金星とのランデブーが見られますよ。金星はマイナス4等、一等星を百個集めた明るさです。一見の価値ありです。

今年は、金環日食をはじめ、天体の食現象の多い年です。そこで、天文台の今年のテーマは「たべる」、「食」です。このウェブサイトの台長の挨拶「2012年、食を楽しむ」にいろいろな食現象を紹介しましたのでご覧下さい。

最も身近な食といえば、日食・月食ですが、古い本には日蝕・月蝕と書かれています。室町時代の古い文書にも見られるということで、日蝕・月蝕は古くからある言葉のようです。

蝕の訓読みは「むしばむ」、虫が食って形を損なう、虫くいになることを表す言葉ですが、文字の形からも想像しやすいですね。浸蝕や腐蝕という言葉がありあますが、だんだん朽ちていく感じがします。

月食のときに月が欠けていく様子は、欠け際がボヤーとしていてはっきりしないので、食べられるというよりは少しずつ浸蝕されていく感じがします。日食の方は欠け際がくっきりしていて、食べられちゃったという感じがしますね。葉を食べるとき、端からきれいに円弧状に食べる虫がいますが、その形は日食のときの欠け方を連想させますね。

英語では、月食はlunar eclipse(ルナー・エクリプス)、日食はsolar eclipse(ソーラー・エクリプス)で、食・蝕にあたる言葉はeclipseです。ギリシア語の「外へ去る」ことを意味する言葉が、ラテン語を経て覆い隠すという意味の英語になったと辞書にありました。

太陽の代わりに星が月に隠される現象は星食と言います。古い本には掩蔽(えんぺい)と記されていますが、覆い隠すこと、隠して見えなくする意味だそうです。難しい言葉で日常生活に使うことはほとんどないと思いますが、似た言葉に隠蔽がありますね。こちらは最近よく見聞きする言葉ですが、都合の悪いことを意図的に隠すようなネガティブなニュアンスが感じられます。

星食・掩蔽は英語でoccultation(オカルテーション)と言いますが、やはり蔽い隠すという意味です。オカルトに似ていますが、同じ語源のようです。

現在は「蝕」の代わりに「食」使うと辞書にありました。僕には、「食」からは食べ物や食事が思い浮かびますが、「蝕」となると、食べ物から離れて、朽ちていくような、崩れていくような、食とはずいぶん違う感じがします。

ずいぶん「食・蝕」にこだわってしまいましたが、ちょっと気になっていたので調べてみました。言葉や文字は、背後にいろいろな歴史や奥行きがあり、なるほどと思うことがありますね。時々、ふだんよく使っている言葉なのに、意味や語源が急に気になることがあります。こうじさんはいかがですか。なんとなく思いつくことを書いていたら取り止めが無くなりました。では、また。

(1月26日)

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ごあいさつ

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2012年、新年のご挨拶をしようと思っているうちに、もう1月も終りが近づいてしまいました。新年のご挨拶の時期を逸してしまいましたが、その後の近況を。

年末年始は、九州の桜島・霧島・阿蘇の火山を訪ねておりました。昨年、大震災に関連して「地球の営み」と言う言葉を何度か使ったのですが、すこし気になっていました。私が最も「地球の営み」を感じるのは火山活動です。最近桜島の火山活動が活発と聞き、「地球の営み」を確認したくなって、年末年始の休みを利用して九州に取材に行ってきました。滞在中、激しく噴煙が昇る姿が何度か見られました。

また、以前に石黒耀著『死都日本』(講談社、2002年)を読んでこの付近の火山に興味を持っていました。この小説は、九州南部に隠れている巨大火山群の噴火が、もし現代の日本で起きたらどうなるかというシミュレーション小説です。実際の地形を見ながら小説を思い起こすと、そのスケールに圧倒されます。いずれ、機会を見てその時感じたことをご報告したいと思います。

1月3日に九州から仙台に戻り、4日から仕事始め・新年の挨拶回りの後、1月9日から20日にかけて、全国科学博物館協議会(略称「全科協」)による海外科学系博物館視察研修に参加しました。今回はアメリカのシカゴ(フィールド自然史博物館、科学産業博物館)、ニューヨーク(リバティ・サイエンスセンター)、ワシントンDC(スミソニアン自然史博物館、ホロコースト博物館)を公式訪問しました。公式訪問の間の自由時間には、他の博物館や美術館なども訪ねましたが、これについては、近日中に「日記」でご報告したいと思います。
 
仙台市天文台では毎年テーマを選んでテーマに沿った活動を行っていますが、今年のテーマは「たべる」、「食」です。天文学では、天体が他の天体を隠す現象を食と言いますが、様々な食現象があります。実は、今年は金環日食や金星の太陽面通過など、いろいろな食現象が見られます。当ウェブサイトの「台長からの2012年のご挨拶」に天文学の「食」をご紹介しましたので、ご覧いただければ幸いです。