台長コラム ときどき土佐日記

2009年4月アーカイブ

 昨年、仙台市天文台で日本SF作家クラブの訪問とトークショーがありました。そのときに推薦したH.G.ウェルズ著『宇宙戦争』(1898年)についての「日記」です。すこしへそ曲がりの日記だったのでここにアップするのをためらっていましたが、「(その3)は?」という声があったので、遅ればせながら書き写しました。

 『宇宙戦争』は火星人の地球侵略、地球外文明(ET)と地球人との出会い(コンタクト)の物語です。その後、火星人の存在は否定されましたが、幼少の頃にこの本に出合い、物語の自然な展開に引き込まれ夢中で読みました。

 もしETがコンタクトを求めてきたら、彼らが平和で友好的かそれとも乱暴で敵対的か、それは現実にはあり得ないと思いますが、それゆえSFとして興味があります。

 『宇宙戦争』は、その後映画で何度も取り上げられましたが、不安や恐怖が誇張されてホラー映画になりました。そこには製作者(地球人)の恐怖心や残虐性が投影されているように感じられ、後味が良くありません。一方、映画『ET』や『未知との遭遇』などでは、平和で友好的なETが登場しました。こちらは、私たちの願望が表現されているようですが、地球人の愚かさや醜さを誇張してETと対比させる手法が気になり、少し違和感が残りました。

 ところで、現実的にはETの地球訪問・恒星間の旅行は不可能に思われます。一番近い恒星からでも(そこにETがいる兆候はありませんが)、現実的なロケットによる宇宙旅行を考えると何万年という途方もない時間がかかります。SFでなければ超えられない「時間・空間の壁」です。ですから、ETの気持になって(といっても地球人の考えですが)地球に来なければならない理由を考えると、生存の地を地球に求めること以外にはないでしょう。その地球では、地球人どうしが生存をかけて争っています。すでに地球は飽和状態、宇宙人を受けいれる余地はなさそうです。とすると、地球人との衝突は避けがたいことになるでしょう。

 『宇宙戦争』の火星人(「人」と呼んでよいかどうか疑問がありますが)は徹底的に人類社会を破壊していきました。地球人の都合など一顧だにせず、その冷酷非情さは想像を絶するものがあります。しかし、地球侵略に彼らの存亡がかかっているとすれば、地球人の都合など問題ではないのでしょう。

 私たちは、残念ながら自分以外の宇宙人と出会った経験がありません。そこで、私たち人類の歴史を振り返えってみると、異民族・異文化が新天地を求めて新しい世界に進出したとき、武力に勝る「文明」が何をし、何が起こったか、歴史が教えてくれます。地球人どうしでも残酷な争いがありました。火星人だけが冷酷ではないようです。ですから、一方的に平和友好を「わけあり」の火星人や宇宙人に期待することは都合が良すぎます。「地球の水は甘いぞ」とか「地球は良い所一度はおいで」などと宇宙に向かって叫んではなりません。できるだけ目立たないようにしているのが賢明です。

 もし、ETが地球に到達できるほどの技術力を持っているとすれば、彼らの武力・破壊力は私達の想像を超えています。彼らと武力で戦うことは賢明ではありません。戦わずして平和共存あるいは生き延びる道を探すべきです。ETが地球にやってくると信じている人は、このことを考えておく必要があると思います。

 こんなことを書きながら、現実と空想が入り混じって頭が混乱してきました。いずれにしても、幸い、地球は「空間と時間の壁」に守られています。もし地球外文明があったとしても、地球に飛来することはあり得ません。

 このような話をすると、「夢がない」、「悲観的」、「後ろ向き」と批判されそうですが、私が天文学と歴史から学んだ地球外文明との出会(コンタクト)についての結論です。ここで、あらためてお断りしますが、科学的には「起こりえないと思うこと」の話ですからフィクション、これもまたSFです。とりあえず、今回のSFシリーズはこれで終わりに。(その4)はありません。

眠り続ける太陽

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 ご無沙汰しております。「台長のブログは眠ったまま」という声を受けて、今回は最近の「眠り続ける太陽」の話題を。

 太陽の表面には黒点が見られますが、その数はおよそ11年の周期で増減します。黒点数が多いときにはフレアーと呼ばれる爆発現象やガスの放出など、太陽表面の活動が盛んになり、放射エネルギーも僅かに増大します。最近では、2001年に黒点数が最大になる極大期があり、2007年に黒点の少ない極小期を迎えました。2008年始めには「新しい活動サイクルの始まりを告げる黒点が現れた」という報告があり、黒点数が徐々に増大するものと期待されていました。しかし、あれから一年余り、黒点がさっぱり増えない、というより黒点がほとんど現れないのです。

 仙台市天文台の展示室では、リアルタイムで太陽像を投影していますが、昨年7月の開館以来、真っ白な円を投影し続けています。太陽黒点の説明をしたくても黒点がありません。毎日太陽黒点のスケッチを続けているスタッフの高橋博子さんは「ただ丸を書くだけでスケッチは楽だけど・・・」といいながら、余りの静けさに当惑気味です。今日も太陽は眠り続けたままのようです。
 

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                 ▲今日も真っ白な太陽を見つめる高橋さん

 
 天文ファンは「太陽の目覚め」を待っているのですが、一方で「太陽はいつまで眠り続けるか」関心が高まっています。というのは、ガリレオ以来およそ400年間の太陽黒点の記録がありますが、何度か黒点の少ない時期がしばらく続いたことがありました。特に、1645年から1715年にかけておよそ70年間、黒点数が著しく減少した期間がありました。このような記録を詳しく調べた太陽研究者の名前に因んでマウンダー極小期と呼ばれています。この時期、ヨーロッパや北米大陸などで著しく寒冷化したという記録があります。この寒冷化と太陽活動の低下に関心が集まっていますが、因果関係はわかっていません。というのは、太陽活動の変動に伴う放射エネルギー量の変動は僅か0.1%に過ぎないので、それが直ちに地球の気候に大きな影響を与えるとは考えにくいのです。

 最近、地球温暖化に対する関心が高まっていますが、眠り続ける太陽(太陽活動の低下)が温暖化にブレーキをかけてくれるのでは、という期待があります。しかし、太陽放射量の変動だけを見ると、予測される効果は非常に小さいようです。

 ということで、太陽が「いつまで眠り続けるか」注目されています。もしかすると「台長のブログはいつまで眠り続けるか」関心をお持ちの方があるかもしれません。このところ天文台の活動が大変活発でした。台長のブログと天文台の活動には逆の相関関係があるようにも見えますが、深く詮索しないでください。