台長コラム ときどき土佐日記

2011年11月アーカイブ

第11回<前編> こうじ(詩人)→まこと(天文学者)

kouji.jpgまことさん、こんにちは。
ようやく秋になりましたね。
秋は好きな季節です。
毎日ミルク(犬)の散歩で公園に行くのが楽しいです。
 
詩集『チカチカ』へのお返事、ありがとうございます!
実は、詩集のタイトルを決めるのに、とても時間がかかりました。
いろんな候補があったんですよ。
シンプルに『12星座の詩』、または『プラネタリウム』。
それから『こんや』...で、散々迷った挙げ句、『チカチカ』に決めました。
 
ワンコイン・プラネタリウムで「12星座」の魅力に魅せられ、だけど、実際の星でなく、すべて「プラネタリウム」で見た星なんだよなぁー、と思い、そんな中「こんや」という詩ができて、それが自分でも気に入っていて...と、こんな感じで悩みながら、『チカチカ』にしたのは、子ども時に星を見ると「チカチカしているー」といつも言っていたからなんです。
 
街の灯りを見ても、星を見ても「どうして、チカチカしているんだろう」といつも思っていたんですよね。キラキラでもなく、ピカピカでもなく、チカチカ...。プラネタリウムに入る度に、そのことを思い出し、心に引っかかっていたので、そのタイトルにしました。
 
そして、月の歌詞の「まるいまるい」って、不思議な歌詞ですね。
ぼくもたまに歌詞を頼まれてつくったりしますが、とても「まるいまるい」みたいな感じは思いつかないですもんね。
そして、月を眺めても「まるいまるい」とは思いつかない...うーん、深いような、単純なような...これも、月のマジックなんですかね。
 
星座の詩をまとめることができたので、次は月をテーマに本を書いてみたいと思っています。
なんか、良い展開方法がないか、今度相談させてくださいね。
 
わんわん
くんくん
まるいまるいハートのかたち
ちかちかなみだやさしいな
 
(10月5日)
 

第11回<後編> まこと(天文学者)→こうじ(詩人)へ


makotokao.jpgこうじさんの次のテーマは「月」だそうですが、やはり月は秋ですね。この頃の月を見ると、月が秋の季語になっていることがよく理解できます。今年は晴天に恵まれ、中秋の名月、10月の十三夜、そしてその後の満月も楽しむことができました。10月の満月の時には、近くに木星が見え面白い風景でした。満月前後は月の光りがまぶしくて星が見えにくいのですが、明るい木星は満月の光に負けずに輝いていましたよ。この頃木星がとても明るく目立ちますが、地球に最も近い位置にあり、しばらくは木星の季節です。

お月見に限らず、四季を通じて月を見る楽しみがありますね。特に、日没後、西の空にまだ夕焼けが残る中に輝く細い月がいいですね。近くに金星が輝いていたりすると格別ですが、このような風景は月がすぐに沈んでしまうので、そのつもりで待っていないと見逃してしまいます。

ところで「月」は三日月をかたどった象形文字が起源と聞きました。月の一番の特徴は満ち欠けですが、三日月の形から「月」の文字を作ったということは、昔の人々にとっても三日月は印象深い月の姿だったんでしょうね。
 
こうじさんはまだ月を望遠鏡で見たことがないということでしたが、その後いかがですか。望遠鏡で見ると、欠け際に大小さまざまなクレーターや山脈、あるいは海と呼ばれる平地などが見えます。地球でも見られそうな風景にリアリティが感じられ、宇宙がとても身近に感じられます。私にとっては、地球と宇宙を橋渡ししてくれる存在です。ガリレオも、初めて月を望遠鏡でながめたとき「月の表面は、多くの哲学者たちが月や他の天体について主張しているような、なめらかで一様な、完全な球体なのではない。逆に起伏にとんでいて粗く、いたるところでくぼみや隆起がある。山脈や深い谷によって刻まれた地面となんの変りもない。」(ガリレオ・ガリレイ著『星界の報告』山田慶児、谷泰訳、岩波文庫)と述べていますが、私たちもガリレオを追体験することができますよ。
 
月は最も身近な天体で、古くから私たちの生活に深く浸透していますが、「もしも月がなかったら」と考えてみるとそのことがよく分かります。

たとえば、日本最古の和歌集と言われる『万葉集』。さまざまな身分の人が詠んだ歌を4500首以上も集めたものだそうですが、データベースがあったので、そこから「月」をキーワードにして抜き出してみました。すると、数えきれないほどの歌が出てきました。いかに月が古くから生活の中に浸透していたかがよく分かりました。もし、これらの歌がなかったら…。日本最古の物語とされる『竹取物語』も月なしには成り立ちませんね。『源氏物語』でも、重要な場面には月が登場し、時の流れや人の心を代弁しています。それが現代の私たちにも理解できるところが面白いですね。月は光源氏に次ぐ影の主役という感じさえします。もし月がなかったら物語はずいぶんさみしいものになったかもしれません。
 
街をあるいていても「月」の文字が目に入ります。居酒屋の看板、食べ物・飲み物の名前、商品の名前、いろいろなものがあります。「月」をさがして街を歩くと結構楽しめますよ。もし、これらが無くなったら街の風景もずいぶんさみしいものになりそうです。改めて月が登場するものを考えてみると、音楽、絵画、美術、ギリシャ神話・・・、きりがありませんね。

先日、大学の講義で「もしも月がなかったら」という話をしたら、「先生、月がなくてはこまります。私の名前がなくなります」という女子学生がいました。名前に月の文字が入っているということでした。
 
実は、私たちの日常生活だけでなく、地球の歴史や生命の進化も月の影響を大きく受けているようです。もしも月がなかったら、一日の長さは今とはずいぶん違ったものになり、もしかすると四季の変化もなかったかもしれないということです。長くなったので、詳しくは一休みした後に。

続く

(11月6日)


月が原因の自然現象といえば、まず潮の満ち干・潮汐がありますね。月の重力の効果で海水が盛り上がったりへこんだりすることによって起こります。潮汐の影響は様々ですが、地球の回転・自転運動にブレーキを掛ける効果があります。理屈は省略しますが、潮汐によって地球が変形すると、月の重力は地球の回転を止める方向に作用します。その結果、地球の自転が遅くなり、一日が長くなります。といってもその量は非常に小さく、10万年間に約1秒長くなる程度です。地球の回転が減速すると、その反作用で月の公転運動が加速され、月は少しずつ地球から遠ざかります。実際に年間数センチメートルずつ遠ざかっていることが確認されています。
 
とても微少な変化ですが、長い「地球の時間」では大きな変化になります。つまり、むかし地球の自転はもっと速く、1日はもっと短かったことになります。一説によると、地球誕生直後の1日は約6時間でしたが、月による減速で24時間になったということです。もし月がなかったら、実は太陽の影響があるので、現在の1日は約8時間ということです。一日のリズムは、生物にも自然にも様々な影響があります。もし月がなかったら生物も地球の進化もずいぶん違ったものになっていたはずです。
 
ところで、月はどのようにできたのでしょうか。天文学的には一番の関心事で、諸説ありますが、現在最も有力な説は巨大衝突説というものです。今から約50億年前、地球が誕生して間もない頃、地球の半分くらいの原始惑星が地球に衝突し、飛び散った破片が集まって月ができたとする説です。それまで説明のつかなかった様々な月の謎が、この説によって解けたのです。天文台の展示室には、コンピューターシミュレーションによる月誕生のCG動画があります。なかなか見ごたえがありますよ。
 
巨大衝突は地球の歴史にとって最大の事件で、様々な影響があったはずですが、地球の自転軸も影響を受けた可能性があります。現在、地球の自転軸は軌道面に垂直方向から約23.5°傾いていますが、一説によると巨大衝突によって傾いた可能性があります。四季の変化は自転軸が傾いていることによって起こりますが、この説によると、もし月がなかったら四季の変化もなかったことになります。
 
こんな話を聞くと、お月様がとてもありがたいものに見えてきます。そして、月が四季折々に見せる美しい姿は、誕生の時に自ら仕組んだ演出ではないかと考えたくなります。長くなってしまいましたが、月の話は尽きませんね。では、また。

(11月9日)



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