台長コラム ときどき土佐日記

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武田こうじさんご出演のスペシャルプラネタリウムは1/14(土)19時~です!

第12回<前編> こうじ(詩人)→まこと(天文学者)

kouji.jpgまことさん、こんにちは。
月のお話、ありがとうございます。

この星の歴史に月は欠かせないものなんですね。
月がなかったら、1日の時間まで変わっていたなんて、すごすぎます。

実は先月、ぼくの誕生日があって、天文台のキラキラ(※)のみんなから望遠鏡をプレゼントしてもらいました!!!!!
もう、うれしくてうれしくて、いつも覗いています(笑)。

いつもぼくはプラネタリウムで星をみていたので、改めて空の星を観ると、いろいろな想いが浮かび、言葉を探し始めます。

さらにぼくのライブの時に、夜空の見つけかたが書いているある本をプレゼントしてもらいました。
(ほんと、キラキラのみんな、ありがとう☆)
これまた、うれしくて、いろいろな締め切りから逃避したい時に(笑)ついページをめくってしまいます。

空をみて、ページをめくり、月の詩を少しずつ書き始めています。

夕月

あれはぼくが夏の公園も
冬のドライブも知らなかった頃のこと
歌を歌う人も
野球選手も
天気予報を伝える人も
みんな年上だった
部屋にポスターが増えていく
生きている時間が遅くなっていく
夕暮れにちょこんと月が座っている
想い出になることも知らずに
誰かを好きになって
今はもう色褪せたタイトル
友だちに「ほんとうの」って言葉を使うようになった時
ぼくはもう戻れないことを知って
自分に遠慮してみたんだ

※キラキラ=天文台若手スタッフの愛称「キラキラ探検隊」のこと

(12月8日)

 

第12回<後編> まこと(天文学者)→こうじ(詩人)
makotokao.jpgこうじさん、望遠鏡を手に入れたそうですね。望遠鏡で月を見ましたか。クレーターは見えましたか。感想はいかがですか。12月10日に皆既月食がありましたね。天文台では、月食の前半はよく晴れて、とても大勢の人が集まりお祭りのようでした。こうじさんは見ましたか。

今年は月の話題で終わりそうですが、12月27日夕方の西の空で細い月が宵の明星金星に近づきます。今年最後の月と金星の出会いですが、けっこういい風景になるはずですよ。夕焼けが残る中、金星と細い月が並んだ風景はとても好きですが、ときには、なぜか少し寂しく感じるときもあります。風景が黒いシルエットになって遠のき、一日の終りを感じさせるからでしょうか。

細い月は日没後すぐに沈んでしまうのでつい見逃してしまいます。見たい時にはアラームをセットしておくといいですよ。このような月と金星の出会いは、来年5月頃まで毎月一回見られます。金星と出会う月はいつも細い月ですが、理由があります。考えてみてください。
 
「月」と言うと、天体の月だけでなく、時間の長さの「月」もありますね。月の満ち欠けの周期、ひと月は約4週間、日常生活の区切りとしては絶妙な時間の組み合わせですね。でも、一月の長さは状況によって感じ方が違います。楽しいことを待つときには「まだひと月もある」と感じ、受験生には「残りはもうひと月しかない」ということになりますね。12月に入って今年の残りがひと月を切ると、年の終わりを切実に感じます。

ひと月を12回繰り返すと1年ですが、今年はなぜか時間が止まったり、戻ったり、月が前後に入れ替わったような錯覚に陥ることがありました。物事の順番が時間の本質ですが、僕の時計は大地震と放射線の影響で狂ってしまったようです。そんなわけで、カレンダーと予定表を確認する機会が多い一年でした。

東北地方大震災は千年に一度の大地震、地球の時間の出来事でした。思いがけなくも私たちは地球の営みに立ち会ったことになります。いろいろな時間が出会った年でした。
 
この一年を振り返ると、もう一つ気になったことが言葉です。大震災に関連して、不意に何か言わなければならない場面が何度かあり、ふだんは使わない言葉を無理に使ってしまい、後で気になって辞書を引いたりしたことがありました。辞書を引く機会の多い年でした。

言葉はふだんそれほど意識せずに使いますが、口から出た後、納豆が糸を引くようにいつまでも意識から離れない言葉もあります。いつも自分が使っている言葉は気にならないけれど、借りた言葉やふだん使わない言葉は使った後いつまでも気になります。「自分の言葉」というのがあるのでしょうね。

本来、言葉は人や神様に心を伝えるものだと思うのですが、伝えるものが無い、心がこもっていない空っぽの言葉は、受け取る人がいなくて、発した人のところに戻ってくるような気がします。それを受け止め、使い方を覚え、自分の言葉にしていくのかもしれませんね。簡単な言葉でも自分の言葉になるまでには時間がかかるようです。辞書に並んでいる言葉と、人が発する言葉の違いがそこにあるのでしょうね。

「糸」と言えば「今年の漢字」の「絆」の偏になっていますね。私は使ったことがない言葉ですが、本来の意味・語源はどのようなものでしょうか。漢字の形から意味を想像するのは難しいですね。
 
この一年を振り返って何か気のきいたことを書こうと思ったのですが、収拾がつかなくなりました。すぐに思い出せないことがいろいろあります。代わりに「失われた時」という言葉が浮かんできました。「失われた時」と言えば、前にお話ししたプルーストの『失われた時を求めて』は全13冊のうちやっと第6冊を読み終える所です。読了まで時間がかかりそうです。

とりあえずここで筆を置こうと思ったのですが、まだ収まらない気がしてなりません。東北地方大地震と原発事故のことがどうしても受け止めきれずに年を越しそうです。僕にとって、2011年はいつまでも終わらないようです。

では、こうじさんお元気で。来年もよろしく。

(12月25日)


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