web版「天文学でSF映画を斬る!」最終回

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 遠藤さん、先日は仙台市天文台でのトワイライトサロンのトークショーにご出演いただきありがとうございました。楽しかったです。「お便り」の方、返信が遅れてすみません。

先日、遠藤さんご出演のNHK「てれまさむね」の「てれまさんぽ」で河岸段丘をたどる番組、再放送を拝見しました。仙台の街並みには河岸段丘が隠れていたのですね。大地の「段差」がデパートの階段になっているなんて、SFそこのけで面白かったです。  

 

今回、「オーロラの彼方に」を紹介して頂きましたが、私もDVDを借りて見直しました。時空の超え方が「大胆」過ぎて、科学的に見るとついていけませんが、物語としては面白いですね。現代のお伽話といったところでしょうか。オーロラが魔法使いで無線通信が魔法の杖のようです。遠藤さんご指摘の「ご都合主義」を棚上げにすると、人々のいろいろな思いがこめられていて、遠藤さんの大好きな理由がよくわかります。親子関係、特に父と息子の関係は、いつでもどこでも物語になりますね。遠藤さんの場合も、遠藤さんの「思い」がそのまま物語になりますね。映画にもなりますよ。マタタビ抜きで猫と共演なんていいかも。失礼!(実は、我が家にも猫がいるのですが、「一匹猫」で俳優の真似をしてます。)

僕の場合、父の記憶は髪の毛とともに薄くなりましたが、時々リアルに思いだすことがあります。しばらく前に思いがけない経験をしました。深夜、目が覚めて洗面所に行ったら、突然父が目の前に現れたのです。びっくりしました。うす暗い中に現れた顔はレンブラントの晩年の自画像のようで、「オヤジも老けたな」と思ったのですが、よく見たらその顔は洗面所の鏡に映った僕の顔でした。考えてみれば、僕もいつのまにか僕がイメージしている父親の歳を超えていたのです。そして、僕も父親に似た姿になっていたのです。

思い起こすと、僕は「お母さん子」で、母親の顔色をうかがいながら父と付き合っていたようです。あまり仲良くすると母のご機嫌を損ねるような気がして、父に打ち解けることが少なかったかもしれません。今思うと父には済まない気がします。しかし、父は、時々一家の主の権威を示そうとすることもあって、怖い存在でもありました。 当時は戦後の復興期、両親ともに生活の再建に追われて子どもと遊んだりふれあったりする時間は少なかったようです。その代り、子どもたちは自由に遊んだりして、僕にとってはそれが良かったと思います。

僕の思春期・青年期には、はやく親から独立して大人になりたいという思いがとても強かった気がします。その時代の特徴かもしれませんが、青年を扱った文学のメインテーマは、如何に親や家族との「絆」を断ち切って独立した大人になるかということでした。ですから、「オーロラの彼方に」の親子関係は、当時の感覚からすると、とても違った世界で眩しい感じがしますね。

僕が子育てをした時代は、親子関係が濃すぎることが子供の成長を阻害するということで社会問題になっていました。僕も、「濃く」なり過ぎないように心掛けた気がしますが、子どもから見てどんな親だったのでしょうか。まだ息子に聞いたことはありませんが、親とは違うことを感じていたかもしれませんね。とりあえず手が離れて、独立した人間としてつきあいたいと思っています。

遠藤さんがおっしゃる通り、映画で「父と年齢も違わなく成長した自分が対話している」のも面白いですね。「これまでの親子関係が、年齢が近い男性同士として、相談に乗ってもらえたりする」のはたしかにすごいこと、憧れますね。 

 

オーロラの話ですが、ニューヨークは八戸と同じ緯度、オーロラが見られるのは珍しいことでしょうね。映画では極地で見られるような鮮やかなオーロラが現れましたが、ニューヨークでオーロラが見られるとしても、そのような鮮やかなオーロラが現れることはないのではないかと思います。

実は、昔、1950年代末だったと思いますが、北海道や東北の日本海側でオーロラが見えたというニュースがありました。当時、太陽活動が非常に活発で、太陽表面に肉眼でも容易に見えるような大きな黒点が次々と現れ、極地ではオーロラ嵐が頻繁に起こったということです。

目撃者によると、北の地平線のあたりが山火事のように赤く見えたということですが、遠方のオーロラが見えたと思われます。地球は丸いので、遠方のオーロラの上部だけが地平線上に見えたのでしょう。オーロラの上部は赤い光を出すので、地平線上に赤い光が見えたと考えられます。

オーロラは宇宙からやってきた高エネルギー粒子が、地球磁気の磁力線にそって大気に飛び込み、大気と衝突して大気を光らせる現象です。地球の磁場は極地に集まっているので、オーロラ粒子も極地に集まり、極地にオーロラを出現させます。したがってオーロラを見るためには極地に行かなければなりません。さらに、昼間は空が明るくてオーロラが見えません。極地の夜となると、季節は冬となり、オーロラを見るには極地の冬、極寒を耐えねばなりませんね。でも、最近は防寒の行き届いたオーロラツアーが企画されているようで、年配の方から「オーロラを見てきた」という話をきくことがあります。ただ旅行の費用を聞くと、財布の中が寒くなる話でした。

 

さて、映画の話ですが、その後「ローマ法王の休日」と「25年目の弦楽四重奏」を見ました。「ローマ法王の休日」は有名な「ローマの休日」のパロディですが、主人公が新しく選ばれたローマ法王で、法王になるのが嫌でバチカンを逃げ出す話です。実は、コンクラーベということで、バチカンのシスティーナ礼拝堂の中の様子、特にミケランジェロによる天井画や最後の審判などが見られると期待したのですが、それなりに楽しめました(実物ではないかもしれませんが)。実は、その後、東京上野の西洋美術館で開催されていた「ミケランジェロ展」を見ました。台風18号が接近中のせいか、空いていて落ち着いて見ることができました。システィーナ礼拝堂の天井画や壁画の複製の展示や解説がありましたが、4Kの高精細の映像でシスティーナ礼拝堂の天井画を紹介していたのが、とても美しく見事でした。たぶん、現場でも見えない細部が美しく再現されていると思いました。

冥土の土産に一度は「実物」を見たいものだと思っていたのですが、とりあえずこれで満足ということにしました。 冥土の土産に見たいものがいくつかあったのですが、今年1月、イタリアのミラノでダビンチの「最後の晩餐」とミケランジェロの彫刻「ロンダニーニのピエタ」を見ることができまし。思い残すことは少なくなったのですが、体重が増えました。

「25年目の弦楽四重奏」は別の機会に。では、また。お元気で。

 

(完)