web版「天文学でSF映画を斬る!」vol.4

sf.jpgendo.jpg   ※このコーナーの説明はvol.1をご参照ください
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台長、残暑見舞い申し上げます。 きっと天文台は、子どもたちの元気な声が連日響き、台長もスタッフのみなさんも大わらわな毎日をお過ごしのことと思います。 どうぞ、子どもたちの真剣な探求心に負けないようにと、熱心に教えるあまり"熱中しすぎ症"になりませんように。

 

前回は、大変失礼しました。「SF映画を斬る」というタイトルなのに、実話ベースの作品チョイスしちゃってましたね、すいません。  でも、"瓢箪から駒"とでも言いましょうか、台長のNASAに行った写真や管制室の話など、行った人だからこそ知る秘密話が聞けて、ワクワクでした。ありがとうございます。  子どもの頃は、「ねぇ、どうして?」「どうして?」って、お父さんやお母さん、近くにいる大人がみんな、僕らの先生でした。 でも、大人になると「そんなことも知らないの?」と言われそうだし、「別に知らなくても死ぬわけじゃないし!」と嘯(うそぶ)いてしまうから、子どもの頃いっぱいあった好奇心の芽が出なくなっちゃいますものね。  

 

僕は、仙台生まれの仙台育ちですが、学生時代、まじめに勉強してなかったので、たとえば「河岸段丘」ということばは知っていても、それがどんな風に生活にむすび着くかとか、仙台が城下町だった?ことや伊達政宗公ってどんな人?って聞かれても、ちゃんと説明出来ませんでした。そこで、その道の専門の人から教えてもらえるお散歩ができたら楽しくないですかと、NHKの方にお話したら、じゃあ番組にしましょうということになりました。NHK仙台放送局の情報番組「てれまさむね」内に"てれまさんぽ"というコーナーが誕生し、考古学、地学、植物学、昔から街に住む人など、専門家の方とお散歩しながらお話を伺っています。天文台もそうですけど、実際に見ながら教わることって、ググッと頭と心に沁みこんできますものね。 今頃は、ペルセルス流星群が話題ですが、前回ですっかり味をしめた僕は、映画から台長にいろいろ教えてもらおうと大好きな映画をまな板に載せようと思います。  

 

今回の映画は、「オーロラの彼方に」です。

 

「オーロラの彼方へ」  アメリカ、ニューヨークを舞台にした2000年に作られたSFファンタジー・サスペンスです。↑ね、今回は、SFです、大丈夫ですね。(^^ゞ  ニューヨークでオーロラが観測されて、その影響で地場が変化します。刑事のジョンは、父の愛用のアマチュア無線機を取り出し繋いでみると、30年前に殉職したはずの消防士の父と繫がります。しかも父によれば、明日が父の死んだ日でした。そこでジョンは、死なないようにあれこれアドバイスします。"自分が死ぬ?"半信半疑な父でしたが、絶体絶命な状況に遭遇し、言われるままに行動すると生還することができました。しかし、父の命を救えたことは、過去を変えたことになり、新たな事件が発生します。今度は、母が猟奇殺人犯に殺されたことになってしまいます。そこで、時空を超えた親子が力を合わせて、なんとか母の命を守り、変わった過去からのゆがみを治めていこうと奮闘する物語です。  

 

時空を超えたパラレル・ワールドの中で、子どもの頃の自分と無線で話たり、過去が変わったのに自分の家族のことばかりで、周りでは変化が全然起こってないなど、突っ込みどころ満載の危険なタイムパラドックスいっぱいなご都合主義的な映画と言われれば、その通りですが、大好きな作品です。  

 

子どもの頃、僕の父は毎日仕事に出掛けていました。日曜日や祝日、夏休みと言っても、遊んでもらった記憶がほとんどありませんでした。なんとも思っていないつもりでしたが「フィールド・オブ・ドリームス」や「ビック・フィッシュ」など、自分の成長の過程で無くなってしまった父との記憶や関わりを紡ぎ直して行く作品に出会うとボロ泣きで、父とキャッチボールしてない経験が、父とわかり合うテーマの作品には"猫にマタタビ"状態です。 さらに、この作品では、若く逞しい父と年齢も違わなく成長した自分が対話しています。親目線vs子ども目線で関わっていたこれまでの親子関係が、年齢が近い男性同士として、相談に乗ってもらえたりする、これってすごくないですか。親子なのに対等で、しかも親父が相談に乗ってくれる!(あ、親父だって、ちょっと興奮しすぎました。(汗) もう、涙、涙・な、カンジです。  

 

そして、パラレル・ワールドがあって、それがオーロラのお陰で会いたい人の会えるという設定にもウキウキなのです。ま、実際には太陽活動が活発だったから、オーロラも起こり、不思議な混線が生じたのでしょうから、オーロラのせいではありませんが。まるで生きている天空クラゲのような美しいオーロラ。不思議なうねりが織りなす交響詩のような巨大な表現力に圧倒されます。 映画公開当時、CG担当した人が、なにかのインタビューで「オーロラを不自然に見られないよう自然な演技をプログラムしました」と語っていて、自然な演技のプログラムをしたってこと自体が不自然じゃん!とかツッコミつつも、映画の中でこんな美しい映像見られるんだって、うっとりしてました。それが、ニューヨークで、しかも普通の格好でみんな見上げてました。 一か八かのカナダ旅行で、エスキモーみたいな格好してツンドラの中をスノーモービルかなにかに乗って行かなければ見えないと思っていたものが、ニューヨークで見られる。え、これって、ニューヨークでもと言うことは、例えば同じくらいの緯度の八戸辺りまで行ったら見られるかもって、思ったら!ドピューンとぶっ飛んじゃいますよね。どーしよう、っつうか、もう行くしかないよねぇと興奮しました。  

 

今や世界中が異常気象で大変なことになってますが、オーロラがニューヨークや八戸辺りで見ることって、あり得るのでしょうか? その時、パラレル・ワールドと混線してしまうほどの磁場がやってきた時、僕らの生活は問題ないのでしょうか? 宇宙人がやってきたと言うと、全世界一致して身構えますけど、オーロラだったらまぁいいか的に、寛容に受け入れちゃいそうですけど、どんなものなんですかね。そう言いつつも、オーロラの事を夢想したら、ちょっと涼しくなった気がしてきました。  このところ、寝苦しくて、ウニを数えて見たりしました(※1)が、わさび醤油の香りが口の中に広がって、失敗でした。やっぱ、閉めきった部屋からベランダに出て夜風と共に星空見つつ、ちょっとリフレッシュして、寝直すのがオツなようですね。猛暑ですので、ご自愛くださいませ。

※ 1 これ、朝ドラの「あまちゃん」ネタですので、見てない方はスルーしてください。

台長につづく・・・daocho.jpg