仙台市天文台について

台長からの2013年のご挨拶

うつす VI



2013年 「うつす」

 

 仙台市天文台では市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 

 仙台市天文台では毎年テーマを選んでテーマに沿った活動を行っていますが、今年のテーマは「うつす」です。

 

 今年のテーマは「うつす」です。「うつす」を辞書で引くと、「写す、映す、移す、遷す」など天文台の活動や宇宙に関係の深い言葉がならんでいます。今年は、このような「うつす」をテーマに様々な活動をしていきます。

 

 天文台の「写す」は、まず天体の写真を写すことです。ひとみ望遠鏡をはじめいろいろな望遠鏡やカメラで写した天体の写真を随時ご紹介します。最近のデジタルカメラは性能が高く、手軽に星空や天体の写真を写すことができます。皆さんにもぜひ天体の写真を写していただきたいと思います。

 

 今年も様々なイベントやワークショップを開催する予定ですが、文字や絵を写し取る楽しい活動もあります。そのような活動にも参加して楽しんで下さい。

 

 天文台の「映す」といえばプラネタリウム投映です。天文台のプラネタリウムはハイブリッド式とよばれ、光学式プラネタリウムによってシャープで美しい星空を、さらにデジタルプラネタリウムで美しい迫力ある映像をドームに映します。また、展示室では、晴れていれば太陽のライブ映像を投映しています。最近は黒点がよく現れますが、今年は黒点出現のピークがあると予想されています。黒点の位置を観察すると、日々移動し、太陽が回転していることがわかります。

 

 「移す」は移動・運動を表す言葉ですが、宇宙には様々な「移す」があります。惑星は恒星の間を移動しながら、留まったり逆戻りしたり不思議な動きをしますが、これは移動する地球から見ているために起こる現象です。展示室の惑星運行儀を見ると、地球と惑星の動きがわかりますが、地球から見た惑星の動きも想像してみてください。

 

 地球の公転運動を私たちが実感することはできませんが、地球は軌道に沿って大移動をして半年後には3億キロメートルも離れた場所に移ります。このように、地球の公転運動を利用して視点を移すと、恒星の見える方向が距離に応じてわずかに変わります。この変化を観測すると恒星の距離を知ることができます。

 

 地球の移動にともなって、星の見え方だけでなく、地球の季節も移り変わります。展示室では、四季のような日常の自然の移り変わりが、実は宇宙と密接につながっていることを知ることができます。

 

 物質だけでなく、エネルギーの移動も大切な天体の営みです。恒星の中心の核融合で発生したエネルギーは表面に向かって移動し、宇宙に放射されます。星内部のエネルギーの移動の仕方が変わると星が膨張したり、振動するなど、様々な現象が引き起こされます。

 

 空間だけでなく、時間にそって目を「移す」と宇宙の歴史が見えてきます。宇宙誕生から137億年、太陽や地球が誕生して46億年の時が流れました。順に目を移すと宇宙の時間発展・進化を追うことができます。

 

 このように、いろいろな「うつす」がありますが、自然やその仕組みを心にうつすことが自然の理解、わかることの第一歩となります。「うつす」を通じて、宇宙を楽しみ、宇宙の理解を深め、宇宙をより身近に感じて下さい。

 

 仙台市天文台は1955年に西公園に創設されましたが、2008年に現在地に遷され、新しい天文台に生まれ変わりました。「遷す」が新しい発展のきっかけになりました。新しい天文台も、市民の天文台として皆さんに親しんでいただければ幸いです。

 

  仙台市天文台台長
土佐誠 サイン

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