台長コラム ときどき土佐日記

sf.jpg6月まで展示室の企画展示コーナーにおいて展開されていた、今年のテーマ「うつす」にちなんだ映画特集、「天文学でSF映画を斬る!」。これは、天文台台長土佐誠と、杜の都仙台まちなか映画館 桜井薬局セントラルホールの支配人・遠藤瑞知さんが、2人が大好きなSF映画の作品を題材に、片や天文学者の観点から、片や"ミーハー映画批評家"として、好き勝手に語ってみよう、そして斬ってしまおう!というコンセプトの展示でした。

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この企画展示は終了してしまいましたが、その続きをこのweb上で公開し、最終回は毎週土曜日に開催している台長の「トワイライトサロン」で、8月に直接対決!?を試みる予定です。

企画展示では、スティーブン・スピルバーグの普及の名作「E.T.」と、1951年に製作されたアメリカ映画「地球最後の日」を取り上げました。

今回web版第1回で取り上げる作品は・・・

『アポロ13』に決定!

ではまず、遠藤さんからお願いします。

 

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まえがき その1

こんにちは、台長。"うつす"というテーマから、映画館で働いている僕が天文台の企画に参加出来る機会をいただきましたこと、本当にありがとうございます。実は、僕も高校生の頃、天文に関わる仕事をしたいと思っていたんです。

僕が高校生の頃、おぼえたてのギターで弾いていたのは、さだまさしさん。子どもたちがまん丸い目をして、話を聞いてくれて、そのあと顔をあげていろんなことを自由に創造する。そんなきっかけとなるお話ができるような、そんな大人に将来なりたいなと憧れていました。彼の歌の「童話作家」とか「天文学者になればよかった」に影響を受けてます。(ベタですね、そして古!って、ことばが聞こえてきそうですが、・・・。)よく夏の蔵王に行って、流星飛び交う星空を眺めたり、プラネタリウムの星座にまつわる神話の話にロマンを感じてました。

でも、理系というか、もう〜算数から得意じゃなくて、早々と天文学の道は断念しました。今回、こんなチャンスが巡ってくるなんて、人生はふしぎですね。夢は、諦めた瞬間に捨ててしまうものではなく、心の中に大切に留めておくとこういう偶然に出逢えるんだと思いました。

大好きな韓国映画「猟奇的な彼女」(ちょっとタイトル怖いですけど・・・)の中でも、「偶然とは、努力した人に運命が与えてくれる橋なのです」という素敵なことばがありました。僕がどんな努力をしたのかは、いささか疑問ではありますが、今回こうして天文台の企画に参加することで、夢が叶ったことに感謝いたします。

 

まえがき その2

さてさて、長い前置きでした。(^^ゞ  
まだ、前置きが続きます。

"うつす"というテーマから「映画における宇宙」で、というお題をいただきました。しかし、どうも映画の中で描かれる宇宙というと、宇宙人や隕石が襲来し、人類に危機が迫るというものが多くて・・・、困っちゃいますね。そこで、先日の企画展では優しい宇宙人が登場する「E.T」を選ばせていただきました。言葉の通じない違った文化を持つ者同士の心のふれあいと、大人に内緒で自分たちだけでミッションをやり遂げる子ども達のワクワクドキドキのファンタスティックなアドベンチャー作品でした。

今回は、憧れの宇宙飛行士やロケットが出てくる作品として「アポロ13」をとりあげてみました。当時の最新鋭の技術とそれを使う男たちの物語であり、危機をどう回避するか緊張感溢れる作品です。


『アポロ13』

1969年、僕が小学生の低学年の時、アメリカはアポロ11号で人類初の月面着陸に成功しました。何度も見せられる月面歩行の映像と「これは、一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。」という言葉にワクワクとドキドキをしたことを覚えています。

僕らが鮮明に覚えているのはそれまでで、その後のアポロ13については記憶が抜けてました。

人類初の月面着陸から一年、1970年に打ち上げられたアポロ13号の実話に基づき製作された、1995年に作られたハリウッド映画です。1993年の「フィラディルフェア」、翌94年の「フォレスト・ガンプ/一期一会」で、2年連続アカデミー賞主演男優賞を受賞した名優トム・ハンクスが主演したことでも話題になりました。

「13」という西欧では忌み嫌われるナンバーのこの宇宙船は、急遽乗組員の変更などドタバタしながらも発射の日を迎えます。打ち上げは無事成功し、順調な飛行を続けていましたが、酸素タンクの爆発から始まった酸素の流出により事態は一変し、月面着陸はおろか、地球へ帰ることさえ危ぶまれていきます。クルー達は、船の損傷もわからないまま地球帰還の道を探りますが、狭い船内に二酸化炭素が充満したり、大気圏再突入角度の計算もコンピュータを使えず、手動制御を余儀なくされるなど次々トラブルに見舞われます。宇宙船内とヒューストンにある管制室が、知恵とチームワーク、沈着冷静な判断で乗り切り、みごと地球に生還する物語です。

この作品が公開された95年といえば、ウインドウズ95が全世界で発売され、新たな時代の到来を予感させる年でした。映画館でこの作品を見た時は、特に違和感なく鑑賞しましたが、つい数年前TVで放送されていたのを見た時には驚きました。「エエッ、こんなアナログな計器だけで、月行ってたの?!」って。(笑)

それだけ今の僕らの生活の中にパソコンやら電子機器らが入り込んでいるんですね。様々な大きさのディスプレイに囲まれて、計器もすべてデジタル表示が当たり前になっちゃっていますからね。僕らの生活も、僕らの視点も、大きく変わっていることを再確認しました。

2010年に、7年間にも及ぶ、60億キロメートルの長い宇宙の旅をして、サンプルリターンした惑星探査船「はやぶさ」の帰還がありました。

様々なトラブルに見舞われながらも諦めず地球から信号を送り、サポートし続けたスタッフの頑張りと、燃え尽きながらも貴重な資料を持ち帰った小さな探査船に日本中が沸きました。人々は、まるで"はやぶさ"を生きているものかのように賞賛し、"はやぶさ"から勇気をもらいました。あの時、そのニュースが、僕はアポロ13号と重なって見えていました。

きっと一人のヒーローが孤軍奮闘して苦難を乗り切るのではなくて、チームワークで苦難を乗り越えたという出来事と、未知なる宇宙が舞台だということがそう思わせたと思います。

太古の昔より、人は星空に夢やロマンを感じ、脅威さえ感じていました。そこに踏みいることは、"入っちゃいけない領域"への挑戦でもあるからです。

だから、失敗したはずのアポロ13号の飛行が「輝かしい失敗」として伝説として語られているのも頷けます。

空は青く美しく、その上に広がる宇宙空間は、神秘で神々しいもの。そこを目指すには、生半可な気持ちではいけません。神聖なるものに真摯に向き合い、持ち合える知恵と技術を結集して向かわなければならないのです。

しかし、映画の中では、視聴者(当時のアメリカ国民)がみんな馴れちゃって、視聴率が取れないからという理由で、各TV局が宇宙船と交信する番組をとりやめてしまいます。誰のせいだとか誰かが悪いとかいう話ではなくて、神聖なるものに対して、油断というか、過信がスキが生んでしまったということでしょう。数字の「13」が不吉な数字とかいう前に、そうした私たちの姿勢そのものに警鐘を鳴らしているようです。日々の生活においても、奢ることなく過ごしなさいとね

宇宙船の中では、生命線である少なくなった酸素と電力を維持するために、交信以外の電子機器(コンピュータ類も含め)を全てシャットダウンさせました。電力消費を抑え、帰還のチャンスを広げるための努力です。暖も取れず宇宙空間を飛ぶ船内の気温は、1~4℃しかなかったそうですから、過酷な寒さに耐えながらの帰還はまさに奇蹟です。

トラブルに見舞われた時、冷静に知恵を絞ること。我慢できるものは我慢し、耐えるという姿勢は、今を生き抜くために必要な術のように思えます。アポロ13号が飛んだ頃の日本は、まだまだ貧乏でした。それがバブルという不思議な時期を経験し、誰もが裕福になった幻想を見せられました。幻想だったと気づかされた後も、あの頃の飽食と幻想を引きずって、またそうなりたいとさえ思っている。トム・ハンクス演じるジム・ラヴェル船長がそうしたように、無いなら無いものとして、知恵を出そうという考え方は大切だと思うのです。たとえば、2011年を経験した日本人として、電力のあり方とかにも通じると思うのです。

そう思うと、劇場公開された時より、むしろ今こそ見るべき時のようなカンジさえします。あ、ちょっと違った方向に行っちゃいました?!(汗)

すぐ近い将来、お金さえ出せば、誰でも宇宙旅行に行ける時代がやってきます。こういう言葉は、似合わないのですが、宇宙旅行がカジュアルになります。でも、だからこそ私たちは、私たちを取り巻く自然や宇宙の未知なるものに畏敬の念を抱きつつ、興味を持ち、探求していかなければなりません。大人は、そのことを夢見る若者に伝えて行かなければなりません。映画化された漫画「宇宙兄弟」もあり、宇宙飛行士を目指す人が増えていると聞きます。ああ、やっぱり天文学者や天文に関わる仕事したかったなぁ。もう遅いですけどね。(笑)
台長、映画のお話はモチロンですが、天文のお話もぜひ聞いてみたいです。

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遠藤 瑞知
街なか映画館 桜井薬局セントラルホールの支配人。
NHK仙台放送局夕方の「てれまさむね」(18:10~)内
仙台の歴史ををゆる~く訪ねるお散歩コーナー「てれまさんぽ」に月イチ出演中。
次回は7月16日(火)予定。
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台長に続く・・・daocho.jpg