アルブレヒト・デューラーの星図

 先日、東京出張のときに少し時間があったので、上野の国立西洋美術館で開催中の「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」を見てきました。美術書によると、アルブレヒト・デューラー(1471-1528)はドイツルネサンス期に活躍したドイツ美術史上最大の画家ということですが、その版画も見事なものです。

 有名な《メランコリア(1514年)》や《騎士と死と悪魔》(1513年)など是非見たい作品がありましたが、もう一つのお目当てはデユーラーの星図です。二枚の木版画《北星天図》と《南星天図》が展示場の最後に展示されていました。約45cmx45cmほどの大きさで、おなじみの星座絵、いわゆるギリシャ星座絵が線描ですっきりと美しく描かれています。(インターネットで「Durer’s Celestial Map」で検索すると画像が見つかります。)

 《南星天図》の隅には銘文があるのですが、解説によると左下の銘文は「ヨハネス・シュタビウスが企画し/コンラート・ハインフォーゲルが星図を決定し/アルブレヒト・デューラーが星図を描いた」ということです。古星図の解説書(*)によると、シュタビウスとハインフォーゲルはニュルンベルグの数学者・天文学者で、シュタビウスが座標系を定め、そこにハインフォーゲルが星を配置したということですが、トレミーのカタログをもとに、約1000個余りの星が記されているということです。

 星座絵は裏返しになっていて、天球を外から見た図、あるいは天球儀を平面に展開した図になっていますが、古い星図ではしばしば裏返しの図が見られます。

 以前、同じ国立西洋美術館の特別企画「ドレスデン国立美術館展」(2005年)のときにデューラーの「星図・北星天」「南星天」が展示されていましたが、そのときは美しく着色されていました。今回はモノクロですが、版画なのでプリントされたものがいくつもあるようです。今回の展示はオーストラリアのメルボルン国立ヴィクトリア美術館所蔵のものでした。

 印刷された星図としては最も古いものだそうですが、後世の星図絵に大きな影響を与えたということです。今からおよそ500年前の作品ですが、時を超えて楽しむことができます。

 今回、見上げるような巨大な木版画《神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の凱旋門》が展示されていましたが、デューラーの版画には小さな細密なものも多く、あまりに細かいので拡大鏡が欲しくなります。良く見ると、小さな版画の中に宇宙が閉じ込められているようす。

 国立西洋美術館は上野駅のすぐそばにあるので、列車の待ち時間があるときにちょっと立ち寄ってみます。最近は、シニア料金(常設展示が無料)を適応してもらえるようになったので、一層入りやすくなりました。馴染みのなかった古典絵画や宗教画なども、何回も見ているうちに、何となく見慣れてきて興味が持てるようになります。仙台市天文台の展示はどうでしょうか。

「デユーラーの版画展」は2011年1月16日(日)までですが、見に行かれたときは《北星天図・南星天図》の木版画もお忘れなく。

(*)Nick Kanas著、“Star Maps - History, Artistry, and Cartography”, Praxis Publising, 2007年。