台長コラム ときどき土佐日記

第2回<前編> こうじ(詩人)→まこと(天文学者)へ

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 まことさん、お返事ありがとうございます!(まことさんって呼び方、失礼かもしれませんが、せっかくのタイトルなので、お許しください)ほんと、いきなりの直球ですいません。でも、この連載の中で、ぼくはどうしてもそういうことを訊きたくなっているようです。だって、実際にまことさんに会っても、そこまで大きな、直球のテーマで質問はできないですから(笑)。なので、この場を借りて、というわけです。
 
 そして、お返事に書いてあったこと、とても興味深く読みました。なんか、言葉によって<宇宙>という存在が作られっていったような気が、ぼくはするんです。<宇宙>を知り、考えた時、それを言葉にしていくうちに、ぼくたちの知る<宇宙>ができていったような気がするんです。時間があって、そこに空間があって、それを解き明かしていくうちに、次々と当てはまる言葉が生まれていく、そんな感じです。
 
 そこからより<宇宙>の解明に向うということは、ファンタジーでもあり、科学的でもあり、とてもとてもすごいことに思えます。もしかしたら、今存在している言葉だけでは説明できないものに出会えるかもしれない...そんなことを思ったりします。構造と進化、つながり...どこまで解き明かされているんでしょう?(これも簡単には説明できないとは思いますが)
 
 <宇宙>とはなにか? そして、ぼくたちとはなにか?
時間とはなにか? そして、言葉とはなにか?
神秘的でもあり、科学的でもある...。
答えはわかっているのに、答えられない...そんな感じなのかなぁ。 (6月2日)
 

第2回<後編> まこと(天文学者)→こうじ(詩人)へ

 

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 こうじさん、お返事ありがとう。ボクもこうじさんと呼ばせていただきます。今度はたくさんボールが飛んできたので、どれをキャッチしようか迷っているうちに、ボールを全部逃してしまいました。ボールを拾ってきます!

 近くに落ちたボールは「構造と進化、つながり...どこまで解き明かされているんでしょう?」。
これから時間をかけて少しずつお話したいと思いますが、今日は「宇宙の構造と進化」に関する言葉を少し紹介してみます。

 「構造と進化」、硬い言葉ですが、社会科の言葉を使うと「宇宙の地理と歴史」になるかな。宇宙を構成する最も基本的な構造をあげると、原子、星(恒星)、銀河、宇宙(全体)、つまり、原子が集まって星を作り、星が集まって銀河を作り、銀河が集まって宇宙を作っています。そして、一つの銀河には数千億の星があり、宇宙には数千億の銀河がある、これが宇宙の最も基本的な構造・地理です。人が集まって国ができ、国が集まって世界ができているようなもの。

 私たちに最も近い、地球が公転している星を太陽、太陽が属する銀河を銀河系と呼びます。天の川は銀河系を内側から見た姿、銀河系を天の川銀河と呼ぶこともあります。星を人間に置きかえると、あなたという人間は“こうじ”と呼ばれ、私という人間は“まこと”、そしてこうじとまことが属する国を日本と呼ぶようなものです(すこしくどくなりました)。

 この中で、星は特別です。水素とヘリウムを主成分とする巨大なガスの球ですが、中心で核融合反応という原子力でエネルギーが発生し、ガスが高温になって星として輝いています。星は天然の原子炉というわけです。

 星の中心部のように超高温・超高密度になると、原子がばらばらになって、原子の核(原子核)どうしが激しく衝突し、合体・融合します。原子の核が融合するので、核融合と言われるわけです。そのとき莫大なエネルギーが発生しますが、同時に原子核が融合するので、より重い複雑な元素が作られます。通常、原子核は壊れたり、合体したりすることはありません。錬金術が不可能な理由です。しかし、超高温・超高密度の星の中心は特別です。新しい元素を生みだす星は、天然の錬金術師です。

 星には、人間と同じように誕生と死、寿命があります。星間ガスが集まって星が誕生し、核融合で輝き、元素を合成し、寿命が尽きると一部のガスを放出したり、大爆発をおこしたりして、新しく合成した元素とともに星間空間に飛び散ります。このような星の誕生と死が銀河という環境の中で繰り返されているのです。これが銀河(宇宙)の最も基本的な営みです。

 これらの宇宙の構造や仕組みは、宇宙の初めからあったものではなく、宇宙の歴史の中で作られたもの、その過程を宇宙の進化と呼んでいます。

 宇宙は、137億年前、超高温・超高密度の状態から爆発的に始まり、ビッグバンと呼ばれています。最初、宇宙はとても単純で、水素とヘリウムという最も簡単な元素とほんの僅かな物質の不均一しかありませんでした。やがて、物質の不均一が重力(万有引力)で成長し、大量の物質を集めて銀河が誕生しました。およそ百億年前のこと、銀河系もそのころに誕生しました。銀河の中では星の誕生と死が繰り返され、水素・ヘリウムより重い複雑な元素が合成され、宇宙の元素の種類も量も豊かになっていきます。そして、約46億年前、銀河系の片隅で、太陽や地球が誕生しました。そのとき、昔一生を終えたいろいろな星が合成した様々な元素を取り込んで誕生したのです。そのような元素が、今私たちの体に取り込まれひと時を過ごしているわけです。「私たちは星のかけらでできている」と言うことができます。

 実は、このような宇宙のしくみや歴史を身近にビジュアルに見ることができます。仙台市天文台のプラネタリウム「天文の時間」では、現在「星ぼしをめぐる旅」という番組が投映されています。この番組では、今お話したことが、プラネタリウムの全周スクリーンに投映された迫力ある映像によって解説されます。こうじさんはごらんになりましたか?もしごらんになったら感想をお聞かせ下さい。

 (こうじさんに「宇宙って、なんなんですか?」と聞かれたとき、このプラネタリウムを見てくださいと答えればよかった!というところで、今日は筆を置きます。)(6月19日)

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