眠り続ける太陽

 ご無沙汰しております。「台長のブログは眠ったまま」という声を受けて、今回は最近の「眠り続ける太陽」の話題を。

 太陽の表面には黒点が見られますが、その数はおよそ11年の周期で増減します。黒点数が多いときにはフレアーと呼ばれる爆発現象やガスの放出など、太陽表面の活動が盛んになり、放射エネルギーも僅かに増大します。最近では、2001年に黒点数が最大になる極大期があり、2007年に黒点の少ない極小期を迎えました。2008年始めには「新しい活動サイクルの始まりを告げる黒点が現れた」という報告があり、黒点数が徐々に増大するものと期待されていました。しかし、あれから一年余り、黒点がさっぱり増えない、というより黒点がほとんど現れないのです。

 仙台市天文台の展示室では、リアルタイムで太陽像を投影していますが、昨年7月の開館以来、真っ白な円を投影し続けています。太陽黒点の説明をしたくても黒点がありません。毎日太陽黒点のスケッチを続けているスタッフの高橋博子さんは「ただ丸を書くだけでスケッチは楽だけど・・・」といいながら、余りの静けさに当惑気味です。今日も太陽は眠り続けたままのようです。
 

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                 ▲今日も真っ白な太陽を見つめる高橋さん

 
 天文ファンは「太陽の目覚め」を待っているのですが、一方で「太陽はいつまで眠り続けるか」関心が高まっています。というのは、ガリレオ以来およそ400年間の太陽黒点の記録がありますが、何度か黒点の少ない時期がしばらく続いたことがありました。特に、1645年から1715年にかけておよそ70年間、黒点数が著しく減少した期間がありました。このような記録を詳しく調べた太陽研究者の名前に因んでマウンダー極小期と呼ばれています。この時期、ヨーロッパや北米大陸などで著しく寒冷化したという記録があります。この寒冷化と太陽活動の低下に関心が集まっていますが、因果関係はわかっていません。というのは、太陽活動の変動に伴う放射エネルギー量の変動は僅か0.1%に過ぎないので、それが直ちに地球の気候に大きな影響を与えるとは考えにくいのです。

 最近、地球温暖化に対する関心が高まっていますが、眠り続ける太陽(太陽活動の低下)が温暖化にブレーキをかけてくれるのでは、という期待があります。しかし、太陽放射量の変動だけを見ると、予測される効果は非常に小さいようです。

 ということで、太陽が「いつまで眠り続けるか」注目されています。もしかすると「台長のブログはいつまで眠り続けるか」関心をお持ちの方があるかもしれません。このところ天文台の活動が大変活発でした。台長のブログと天文台の活動には逆の相関関係があるようにも見えますが、深く詮索しないでください。