台長コラム ときどき土佐日記

 夏休みが終わり、天文台のプログラムも夏休みの特別プログラムから平常プログラムになりました。平日の午前中は小中学生の天文台学習があり、9時の開館とともに子供たちの元気な声がにぎやかにエントランスホールに響きわたります。

 子供たちの声を聞きながら、幼少の頃の夏休みの終わりを思い出します。まず、夏休みの宿題です。いつも夏休み終了間際に慌しく仕上げたものですが、天文台に来た皆さんはどうでしょうか。

 私は中学二年生の夏休みに初めて東京から仙台を訪れました。初めての長期間の遠距離旅行でした。西公園にあった旧仙台市天文台に出入りしながら楽しく過ごしましたが、あっという間に夏休みの終わりが近づき、お別れの時がきました。

 滞在中に天文台で親しい友達ができ、仙台を離れるときには仙台駅まで見送りに来てくれました。幼い私たちにとっては、そんな風に遠方の友を見送ったり、見送られたりするのは初めての経験で、お互いどんな風に振舞ってよいかわからず、戸惑いながら言葉少なに出発の時間を待ちました。

 ベルが鳴って汽車がゆっくりと動き出すと、体の方も自然と動き出し、目をぱちくりしたり、首を大きく振ってうなずきあったりしながら、窓から体を乗り出すようにして手を振りました。

 遠ざかる友達の姿が見えなくなるのを見届けて席に着きましたが、今まで感じたことのないような気持ちが湧き上がってきて、しばらくの間じっとしていました。汽車が仙台の市街地を通り抜けて緑の水田地帯を走る頃には、心も平静を取り戻し沿線の風景が眼に入るようになります。

 そこで新たに心に浮かんでくるのは、仙台ではすっかり忘れていた夏休みの宿題です。夢から覚めたような気持ちになって、東京まではまだ長い旅ですが、頭の中で残された日数を数えながら宿題の対策を考えるのでした。

 夏休みの終わり、夏が去れば思い出すのは、静かな別れと宿題でした。