過去の台長ごあいさつ

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2023年のごあいさつ

台長からの2023年のご挨拶

2022年までの約3年間、COVID-19により様々な活動が制限されました。仙台市天文台においても、お客様と身近に触れ合いながらの交流活動が制約された3年間でした。 しかしながら、「宇宙を身近に」をミッションとする当天文台においては、様々な制約がある中でも、できるかぎりの交流活動を図り、中期目標「WAをひろげよう」の具現化を行ってきた3年間でもありました。 体験の環・快適な環境・活動の輪の3つのWAが、市民の皆さまにも感じていただいていることを期待している次第です。

さて今年は、天文台の大きな環境整備をする年となります。1番大きな整備は、1月から4月下旬までのプラネタリウムの大規模修繕となります。プラネタリウム機器をすべてリニューアルいたします。また、プラネタリウムのドームの外装をはじめ、施設のお色直しを行います。 さらには、2022年3月の福島県沖震により破損したひとみ望遠鏡の制御装置の交換も行われます。これら多くの修繕の間、市民の皆さまには、不便をおかけいたしますが、リニューアルする施設・設備にご期待いただけますと幸いです。

なお、プラネタリウムのリニューアルオープンは、6月19日(月)を予定していますが、それに先立ち、4月29日(土)から6月18日(日)までの開館日には、プラネタリウムをプレオープンし、特別番組を投映いたします。新しいプラネタリウムシステムを体感いただける番組となりますので、是非ご覧いただきたいと思っております。 また、プラネタリウム投映休止中の土曜日には、観望会の開催時間を長くする予定にしています。晴れた土曜日には、じっくりと天体を観望していただけます。こちらにも、どうぞおいでくださいませ。

今年は、三大流星群の観察条件が良いということ以外、大きな天文現象はありません。部分月食もわずかに欠ける程度です。とはいえ、当天文台では、「宇宙を身近に」感じていただける活動を展開していく所存です。 宇宙が身近になることで、私たちの生活が豊かになっていくと私は考えております。市民天文台として、市民の皆さまの生活が豊かになるように環境を整備し、活動を展開してまいります。皆さまのご来館を お待ちしております。

2022年のごあいさつ

台長からの2022年のご挨拶

昨年までの2年間、生活のあらゆる場面に制約があり、自由な活動ができるありがたさを感じました。仙台市天文台においても、お客様と身近に触れ合いながらのサイエンスコミュニケーションを多くの場面で自粛致しました。 「宇宙を身近に」をミッションとする当天文台において、お客様と身近なコミュニケーションをとりづらい環境は、 職員にとっても歯がゆい毎日でした。そのような中ではありましたが、中期目標「WAをひろげよう」の活動として、 「展示・プラネタリウム・望遠鏡を使ったエクスペリエンスサークル(体験をつなぐ環)」の事業展開を行いました。 また、「来やすく居やすい環境整備」の取り組みとして、移転時より課題であったカフェの設置も実現しました。

この中期計画は、3年間の計画となっており、今年がその最終年度です。 上記2つの他に「市民との活動の輪」も挙げており、市民天文台として、市民が活躍する場の提供にも取り組み、中期計画のまとめをしていきたいと考えております。 また今年は、中期計画の最終年度であるとともに、天文台が錦ケ丘に移転して15年目に入る年でもあります。 仙台市のPFI事業としての「新仙台市天文台運営事業」は、2008年から30年間の維持管理・運営が計画をされており、ちょうど折り返しの年度となります。 その計画の中には、現在のプラネタリウムシステムの利用を今年度までとし、次年度から新システムにリニューアルする計画も組み込まれています。 現在のプラネタリウムシステムでの投映は,2022年12月末までとなっております。ぜひ、現在のプラネタリウム投映を見納めていただきたいと思っております。

一方、今年の天文現象に目を向けると、11月8日の皆既月食中に見られる 天王星食(月に天王星が 隠される現象)が大きな話題になることでしょう。 また、火星も2年2か月ぶりに地球に接近します。年末に向けて少しずつ明るく大きく見えてくる火星の観察が面白くなります。 この他の天文現象についてもエクスペリエンスサークルを実感できるように事業を展開していく予定です。 まだ活動制約が想定されますが、来やすく居やすい環境づくりに心がけ、市民天文台として、市民の皆さまが活躍できる環境を整えていきたいと考えております。 皆さまのご来館をお待ちしております。

2021年のごあいさつ

台長からの2021年のご挨拶

新型コロナウイルスに翻弄された1年が終わり、新しい年となりました。今年は、昨年延期になったオリンピックやパラリンピックが開催される予定です。また、東日本大震災から10年の節目の年ともなります。人々が穏やかにスポーツを楽しんだり、震災の追悼をしたりすることを、多くの方々と直接共有できる年になることを願うばかりです。

さて、仙台市天文台においては、中期計画の2年目の年となります。当台では、3年毎に中期計画を立て、事業を展開しております。今回の中期計画では、「WAをひろげよう」とビジョンを定めました。そして「宇宙を身近にする」活動を通して、以下の3つの「WA」の実現を目指しています。3つの「WA」とは、「市民との活動の輪」・「来やすく居やすい環境整備」・「展示・プラネタリウム・望遠鏡を使ったエクスペリエンスサークル(体験をつなぐ環)」となります。

この中で今年大きな動きとなりそうな事象としては、「来やすく居やすい環境整備」としてケータリングカフェの設置を検討しています。当台がここ錦ケ丘に移転以来、多くのお客様からのご要望を、ようやく具現化できそうな段階になってまいりました。また、「エクスペリエンスサークル(体験をつなぐ環)」の具現化においても、今年2回ある月食を中心に展開される予定です。展示・プラネタリウム・望遠鏡と天文台が持つ設備を存分にご堪能いただき、太陽と月と地球が作り出す稀有な現象を味わっていただけると幸いです。

さらには、今年も東北大学理学研究科、宮城教育大学、仙台天文同好会、天文ボランティアうちゅうせん等の連携協定団体様とのコラボレーションによる事業や、当台のブレインサポーター、スタッフサポーターによる活動もこれまで通り展開されます。本年もご期待いただけますと幸いです。

以上のように、仙台市天文台は「市民天文台」としての役割を果たすべく、「宇宙を身近にする」活動を展開して参ります。ぜひ、何度でも足を運んでいただければと存じます。

就任のごあいさつ

台長就任にあたって

 この度,仙台市天文台の第八代台長を拝命しました小野寺正己と申します。就任にあたり,ご挨拶を申し上げます。

 まずは,これまで台長を務めていただいた土佐誠台長のこれまでの活動をご紹介いたします。土佐台長には,2008年にスタートした,30年に渡るPFI事業形態による仙台市天文台の維持管理・運営の最初の12年間のかじ取りをしていただきました。我が国の社会教育施設においては例をみない長期の事業である上に,移転当初はPFI構成企業各社の社員や市職員等が一堂に会し,指揮命令系統が複数ある職員体制でした。そのような状況下でありながらも,持ち前の穏やかな言動で,職員を1つにまとめていただきました。その滑り出しもあり,現在の天文台の賑わいを支える職員集団があるのだと感謝しております。今後は名誉台長として,引き続き天文台職員を支えていただき,社会教育施設としての品質維持にご活躍いただく予定です。

 さて私,小野寺は,土佐台長とは異なり,天文学の研究者ではありません。大学の学部教育では天文学を卒業論文に取り組みましたが,その後の修士,博士の研究においては,教育心理学を研究対象とし,現在も教育心理や科学教育を研究しております。よって,天文学の分野で天文台を支えていくには心もとない状況です。しかしながら,土佐台長からは,教師としての学校教育経験や,教育を研究してきた経験が,社会教育・生涯学習施設運営に活かせるはずとの励ましをいただき,台長職をお引き受けした次第です。

 仙台市天文台は,開台時より,市民天文台として社会教育施設の役割を果たしてきました。そして,現在の仙台市天文台は,博物館施設としては珍しく,未就学児から高齢者までが幅広くご来館いただく施設に成長しております。まさに生涯学習施設になってきていると自負できる状況です。私は,このように成長した施設の長として,引き続き全職員とともに「宇宙が身近に」なる活動を展開し,多くのお客様にご来館いただけるよう努力してまいりたいと考えております。そして,その結果として,仙台市天文台が生涯学習施設として,一層市民に愛され,発展できるようにしてまいる所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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退任のごあいさつ

 このたび,本年6月30日をもちまして仙台市天文台台長を退任いたします。ここに退任のご報告とともに,多くの方々にいただいたご支援ご厚情にお礼を申し上げたいと思います。

 仙台市天文台は1955年に仙台市によって青葉区西公園に設置された社会教育・生涯学習施設ですが,2008年に西公園から現在地錦ケ丘に移転し,新しい天文台に生まれ変わりました。私は,新天文台の発足と同時に台長に就任し,12年間台長職を務めさせていただきました。

 旧天文台は市民の天文台として市民に親しまれてきましたが,新しい天文台も市民に愛され親しまれる天文台を目指し,施設のミッションを「宇宙を身近に」という言葉で表現し,市民の皆様に宇宙が身近に感じられるような活動を心掛けてまいりました。この間,当初の想定をはるかに超える来館者があり,市民による様々な活動が行われ,また,多くの方々から様々なご支援を頂きました。そこには市民とともに成長する天文台の姿を見届けることができ,大変うれしく思っております。

 後任の台長には,副台長の小野寺正己氏が就任いたします。氏は新天文台の計画の段階から参画し,様々なアイデアを計画に盛り込み,開館後は副台長・運営マネジャーとして天文台の活動全般を指導されてきました。天文台の生みの親・育ての親として,天文台を最もよくご存知の方です。さらに,氏には教員の経験があり,また教育心理学の専門家として,教育について高い見識をお持ちです。天文台では,社会教育・生涯学習に加えて,プラネタリウム・展示・望遠鏡などを活用した学校教育支援が重要な活動となっており,市内小中学校の理科の授業の一部を天文台で行っております。こうした天文台における学校教育支援においても,氏の高い見識が生かされるものと期待しております。

 なお,台長退任後は名誉台長としてささやかながら天文台の活動に参加させていただきます。開台以来,毎週土曜日の夕暮れ時に開催しておりましたトワイライトサロンもしばらくの間私が担当させていただきます。

 あらためて,言葉では言い尽くせない思いがありますが,これまでの皆様のご厚情ご支援に深く感謝いたします。今後も新台長ともども天文台をご支援いただければ幸いです。

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2020年のごあいさつ

台長からの2020年のご挨拶

 仙台市天文台(以後天文台)は1955年に仙台市西公園に開台しましたが、2008年に現在地に移転し新しい天文台に生まれ変わりました。新天文台では施設の使命を「宇宙を身近に」という言葉で表現し、社会教育・生涯学習施設として市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような市民活動の場になることを目指しています。宇宙が身近に感じられる場面はいろいろありますが、私としては、宇宙の理解が深まって身近に感じられるようになることを願っています。

 星空は季節とともに移り変わり、四季折々の星座が楽しめますが、時に興味深い天文現象が見られます。本年は、年始から春にかけて宵の明星・金星が日没後の西の空に明るく輝きます。その輝きは明るい街中でも容易に認められ、UFOと間違えられることもあります。6月には部分日食が見られ、さらに10月には火星が2年ぶりに地球に接近します。火星は、前回の大接近に次ぐ準大接近で秋の星空にひときわ赤く輝きます。これらの天文現象の情報は随時HP等を通じて天文台から発信されますが、天文台の展示室の解説によって理解を深めたり、ひとみ望遠鏡による観望会でリアルな姿に触れることができます。季節の移り変わりに合わせて星空に親しんでいただければと思います。

 近年、極端な気象現象による自然災害が目立ちますが、その原因は地球温暖化にあるということです。局地的な現象に見えますが、地球規模の大気現象の一部で、それを理解するためには地球スケールの視点が必要になります。まさに、宇宙から地球を惑星として見る視点です。そうした目には自然だけではなく、地球人の生活にも想像が及びます。貧困、紛争、難民など様々な困難が地球人の未来を脅かしていることが想像できますが、こうした困難を乗り越えるためには、人間社会の利害を超えた宇宙的視点と知恵が役立つはずです。そのためにも、最も身近な惑星として地球にも関心を深めたいと思います。

 今年は東京オリンピックの年です。その起源は古く、古代ギリシャで神々にささげた祭典と言われています。悲惨な戦争に明け暮れていた古代ギリシャで、オリンピックの間は戦いを止めてスポーツを競い合ったということです。背景には平和への切実な願いが読み取れますが、それが2000年の時を超えて19世紀末に近代オリンピックとして復活した理由でしょう。古代ギリシャに伝わる出来事はギリシャ神話に重なりますが、ゼウスやヘラクレスなどギリシャ神話の神々や英雄は星座となって今も星空を舞台に活躍しています。プラネタリウムで星空を見上げながら時空を超えて古代ギリシャ人と平和への願いを共有していただければと思います。

 昨年から気になっていた星があります。太陽です。表面の活動が非常に静かで、黒点がほとんど見られない時期が続きました。太陽は11年の周期で表面の活動が変動しますが、そろそろ新しい活動の周期が始まると予想されます。どうなるか注目です。

 本年も、天文台を通じて、皆様に宇宙と自然を身近に感じていただければ幸いです。

2019年のごあいさつ

「宇宙を身近に」そして「We♡(らぶ)宇宙」へ

 仙台市天文台(以後天文台)は1955年に仙台市西公園に開台しましたが、2008年に現在地に移転し新しい天文台に生まれ変わりました。新天文台では目標を「宇宙を身近に」という言葉で表現し、社会教育・生涯学習施設として宇宙を身近に感じられるような市民活動の場になることを目指しています。

 天文台をレストランにたとえると、主なメニューはプラネタリウムで満天の星を満喫すること、展示室で宇宙の理解を深めること、さらに天体観望会でリアルな宇宙に触れることなどがあります。プラネタリウムは投映者やテーマが変わり、それぞれ違った「味」をお楽しみいただけます。展示室は昨年10年ぶりに更新され、太陽系から銀河系へ、より遠方の宇宙へお招きします。また天体観望会では、季節の「旬」の天体を体感していただけます。

 今年も様々な天文現象や宇宙に関する話題が豊富ですが、特に1969年のアポロ11号による人類初の月面着陸から50年を記念する年となります。アポロ計画は、スプートニクショックを受けた米国が1961年に始めた宇宙開発計画で、米ソ冷戦の申し子でした。やがて冷戦が終結し、2011年には米ソを含む多くの国々が協力して国際宇宙ステーションが完成し、宇宙にも平和が訪れたようでした。しかし、最近の激化する宇宙開発競争や緊張高まる国際情勢を考えると、あらためて宇宙の平和を切望します。

 宇宙開発は地球近傍に限られますが、その彼方に人の手の届かない本当の宇宙が広がっています。天文台には、太陽系を75億分の1のスケールでデザインした惑星広場があります。地球は太陽から20m離れた直径1.7㎜の小円に縮められていますが、ここまで縮めても土星より遠方の惑星は敷地内に収まりません。それほど太陽系は広いのですが、さらにその外に銀河系の星々の世界が広がっています。そこには138億年前のビッグバンに始まる宇宙進化の壮大なドラマの舞台があるのです。そうした宇宙に思いをはせるとき、人間社会の利害や束縛から解放され、自由に想像や思考を広げることができます。天文台でそうした本当の宇宙を見つけてください。

 ひるがえって、宇宙から地球を眺めると、地球温暖化、貧困、紛争など様々な困難が地球人の未来を脅かしています。こうした困難を乗り越えるためには、限られた資源や富を独占するのではなく、分かち合い助け合わなければなりません。そのためには人間社会の利害を超えた「宇宙的思考・知恵」が必要でしょう。地球人・人類を救うために「宇宙を身近に」することが役に立ちそうです。

 天文台を通じて、みなさまに宇宙と自然を身近に感じていただければ幸いです。

2018年のごあいさつ

移転して10年、「宇宙を身近に」そして「We♡(ラブ)宇宙」へ

 仙台市天文台(以後天文台)は1955年に仙台市青葉区西公園に開台しましたが、2008年に現在地青葉区錦ケ丘に移転し、今年7月1日には移転開館から満10年を迎えます。天文台は市民との協力で誕生した市民の天文台として皆さんに親しまれて、移転後も学校教育・社会教育・生涯学習施設として広く市民に活用していただいております。本年初頭に延べ入館者数が300万に達する見込みです。

 この10年を振り返ると、開館時の想定を超えた賑わい、3.11東日本大震災、市民の活動の広がり、地域の教育研究機関との連携協力、さらに天文台学習で学んだ児童生徒さんの成長など、市民の天文台としての成長を見ることができます。

 新天文台の開館にあたり、施設のミッション(果たすべき使命・役割)を分かりやすい言葉で表現しようと考え「宇宙を身近に」という言葉を掲げました。皆さんに宇宙を身近に感じていただけるような活動をしようという趣旨ですが、今後もこの「初心」を大切にしたいと考えています。宇宙が身近に感じられるようになる活動はいろいろありますが、私は宇宙の理解が深まって身近に感じられるようになることを願っています。

 このミッションを実現するために、天文台では3年ごとに中期目標を設定し活動の指針としています。先期は、皆さんに「We♡天文台」と言っていただけるような愛される天文台を目標としましたが、今期(昨年から)は、皆さんがさらに宇宙が好きになることを願って「We♡宇宙」という言葉で表現しました。

 天文台は、施設の長期計画の中で10年ごとに展示を更新することになっていますが、今年がその更新の年に当たります。これまで、利用者やスタッフサポーターの声、経験、さらに天文学の進歩などを考慮して更新のプランを練ってきました。新しい展示では、親しみやすく楽しい展示とともに、より広く深く宇宙に触れていただけるような展示を目指しています。展示更新にともなう工事が1月から3月にかけて行われ皆様にご迷惑をおかけしますが、4月には新しい展示室をご披露したいと考えています。この機会に、皆さんにも宇宙のイメージを更新していただき「We♡宇宙」と言っていただけることを願っています。

 今年も様々な天文現象がありますが、特に、1月31日の皆既月食と7月から8月にかけての火星大接近が注目されます。天文台では、定例の観望会とともに天文現象にあわせた観望会も計画しています。プラネタリウムや展示室で時空を超えた宇宙をお楽しみいただき、天体観望会ではひとみ望遠鏡を通して直接リアルな宇宙にふれていただきたいと思います。

2017年のごあいさつ

2017年「We♡(ラブ) 天文台」から「We♡(ラブ) 宇宙」へ

 仙台市天文台(以後天文台)は1955年に仙台市青葉区西公園に開台しましたが、2008年に現在地青葉区錦ケ丘に移転し今年10年目を迎えます。天文台は市民との協力で誕生した市民の天文台として皆さんに親しまれてきました。それを引き継ぐ形で、移転とともにスタッフも設備も一新し、新しい天文台に生まれ変わりました。学校教育・社会教育・生涯学習施設として広く市民に活用していただき、昨年末で延べ入館者数が270万を超え、来年2018年には300万に達する見込みです。

 新天文台の開館にあたり、施設のミッション(果たすべき使命・役割)を分かりやすい言葉で表現しようと考え「宇宙を身近に」という言葉を掲げました。皆さんに宇宙を身近に感じていただけるような活動をしようという趣旨です。宇宙が身近に感じられるようになる活動はいろいろありますが、私は宇宙の理解が深まって身近に感じられるようになることを願っています。

 このミッションを実現するために、天文台では3年ごとに中期目標を設定し活動の指針としています。昨年までの3年間は、皆さんに「We♡天文台」と言っていただけるような愛される天文台を目標としました。この3年間「We♡天文台」を合言葉に活動してきましたが、幸い多くの方々に来館いただき、また市民による様々な活動も活発に行われ、この中期目標が達成されたと感じています。

 昨年、スタッフ全員で次の3年間の中期目標を議論してきました。そして天文台を愛してくださる皆さんがさらに宇宙が好きになることを願って「We♡宇宙」という言葉を選びました。皆さんに、もっと宇宙が身近になって「We♡宇宙」と言っていただけるような天文台をめざします。

 プラネタリウムの映像や天体写真は美しく、時に神秘的に見えますが、その背後のリアルな宇宙を想像することも楽しく興味深いことです。また、天文台で土曜日の夜開催される天体観望会では、ひとみ望遠鏡を通してリアルな宇宙に直接触れることができます。さらに、展示室では、望遠鏡で見た小さな赤い光の点が実は晩年を迎えた巨大な星であることや、小さな淡い光の雲の正体が数千万光年かなたに数千億の星が集まった銀河であることなど、奥深い宇宙の仕組みや営みを知ることができます。天文台ではこのようにリアルな宇宙に触れる機会を用意し、皆さんがお気に入りの宇宙に出会えることを願っています。

 天文台は、施設の長期計画の中で10年ごとに展示の更新を行うことになっており、来年がその更新の年に当たります。今年は、これまで練ってきた更新プランを具体的に実行し、来年の4月には新しい展示室をご披露したいと考えています。この機会に、天文台を愛してくださる皆さんにも宇宙のイメージを更新していただき「We♡宇宙」と言っていただけることを願っています。

2016年のごあいさつ

2016年 「宮沢賢治」

 仙台市天文台では市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。様々な活動を通じて宇宙の理解が深まり、宇宙が身近になることを願っています。その一助として毎年テーマを設け活動の指針としています。

 2016年度のテーマは宮沢賢治生誕120年を記念して「宮沢賢治」です。

 私は「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」で初めて宮沢賢治に出会いましたが、賢治の作品を読むようになり、様々な人物やキャラクターに出会いました。その中で最も親近感を覚えるのは『虔十(けんじゅう)公園林』の主人公虔十少年です。「風がどうと吹いてぶなの葉がチラチラ光るときなどは虔十はもううれしくてうれしくてひとりでに笑えて仕方ない」という少年です。私も幼少のころ星に親しむようになり、東の空に目当ての星が昇ってくるのを見て「うれしくてひとりでに笑えて仕方ない」時がありました。今もその時のことを思い出すとうれしくなります。

 虔十少年は幼くして亡くなりましたが、私は成長して『銀河鉄道の夜』を読むようになりました。主人公ジョバンニと親友カムパネルラとの交流や美しいファンタジーの世界に引き込まれ賢治の宇宙を旅しました。不思議な物語が展開しますが、物語を読み解こうとすれば賢治の心の宇宙を探究することになります。

 昔、神の意思が天に現れると考え、天文学者は天の文様を読み解き神意を知ろうとしましたが、やがて天文学は宇宙を科学的に探究する学問になり広大な宇宙を発見しました。賢治の物語も、歳を重ねるごとに読み返すと、彼の心の宇宙がより深く広がっていることを発見します。

 賢治の物語には天の川や様々な星が登場しますが、その由来を考えると自然の宇宙につながります。天の川や美しい星空は光害のために都会では出会うことが難しくなりましたが、よく晴れた夜には天文台の惑星広場でも見ることができます。プラネタリウムでは賢治が見たであろう天の川や満天の星を疑似体験することができます。また、天体観望会ではひとみ望遠鏡を覗(のぞ)いて星や天体のリアルな姿を見ることができます。さらに展示室では目に見えない星や天体について学ぶことができます。

 賢治の物語を読むと、深い孤独や悲しい別れに胸が痛むことがありますが、一方、虔十少年の豊かな感性、カムパネルラやジョバンニの思いやりのあるたくましい心、あるいは豊かな自然との交感などに出会うと希望が湧いてきます。賢治は37歳という若さで世を去りましたが、私たちの心に多くの希望の種を残してくれました。そのような希望の種を虔十少年のように大切に育てる、「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と思います。

 賢治は豊かな自然の中で宇宙を身近に感じながらイメージを膨らませて理想郷イーハトーブを夢見ました。皆さんにも天文台で思う存分イメージを膨らませいただければ幸いです。私は、天文台の惑星広場が賢治が夢見たイーハトーブの広場のようになることを夢見ています。

仙台市天文台台長

2015年のごあいさつ

2015年 「起源」

 仙台市天文台では市民の皆様が宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 今年のテーマは「起源」、物事の「起こり・始まり・ルーツ」です。自然や宇宙、あるいは関連する生活・文化の起源を探究してみましょう。

 起源を考えるとき、最も重要な出来事は「誕生」です。どのような生き物も、誕生の瞬間は感動的です。星・恒星の形成過程にも「誕生」という言葉が使われますが、劇的で興味深いものです。

 星は銀河系の中で絶えず生まれていますが、その始まりは星間ガスの重力による収縮です。つぶれたガス球の中心で核融合反応が起こりエネルギーが放出されると、ガス球は高温になって自から輝き始めます。星の誕生です。この過程は母体となった周囲のガスや塵に隠されて可視光ではほとんど見ることができませんが、直接観測できる電波や赤外線によって解明が進んでいます。

 銀河系には新しい星、古い星などいろいろな世代の星が集まっています。星を調べると星が誕生した時代の銀河系の様子がわかります。銀河系が誕生した頃に生まれた古い星は、銀河系の起源を教えてくれる「生きた化石」です。こうした古い天体を「発掘」する銀河系の「考古学」は、銀河系の起源を解明する有力な方法です。

 星や人体を構成する元素の起源も興味深いものです。私たちの体はいろいろな元素が集まっていますが、その起源をたどるとむかし宇宙に輝いた星にたどり着きます。これらの元素は星の中心部の核融合反応によって合成され、星の一生の終わりに宇宙にまき散らされたものですが、星間ガスに混じりあって新しい星の材料となりました。そのような元素を集めて太陽や地球が誕生し、その一部が私たちの体に集まっているのです。これらの元素の原料となった元素は、最も簡単な元素の水素ですが、その起源は宇宙の始まりビッグバンにさかのぼります。このように、元素の起源を考えると、私たちの体にはビッグバンに始まる宇宙の歴史が刻まれていることがわかります。

 地球には宇宙から様々な物質がやってきますが、それらの起源も興味深いものです。流星は地球に高速で飛び込んできた宇宙の塵ですが、その起源は彗星がまき散らした塵です。オーロラを輝かせた粒子は太陽風にのって太陽のコロナからやってきました。このような物質の起源をたどると、地球は広く宇宙につながっていることがわかります。

 天体の起源を考えるとき、その誕生には必要な条件があります。地球の誕生には太陽が必要でした。太陽の誕生には銀河系という環境が必要でした。そして銀河系の誕生には、それを可能にする宇宙が必要でした。こうして起源をつきつめると宇宙全体の始まりにたどり着きます。

 宇宙の探究は起源を求める旅のようです。宇宙の時空の広がりと豊かさを考えると、この旅は人類にとって終わりのない旅になりそうです。

2014年のごあいさつ

2014年 「光」

 仙台市天文台では市民の皆様が宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 私たちはいろいろな光の中で暮らしています。五感の最初に挙げられる視覚は、光によって外界を感知する最も基本的な感覚です。この文章も、お読み頂いている方に、視覚を通して訴えるものです。

 光は周囲が暗いほど明るく輝いて見えます。東日本大震災で停電の夜、暗闇の中の一本のキャンドルの明るさに驚き感動したことを思い出します。 都会では光害で見えにくくなった星の光も、光害のない暗い夜空では驚くほど明るく輝いて見えます。星は夜空に輝く小さな光の点ですが、光を調べると、 その正体は太陽のように膨大なエネルギーを放射する巨大な高温のガス球であることがわかります。しかし、星の光は星の表面の様子を伝えるもので、 その膨大なエネルギーの源を知ることはできません。その解明には、外からは見えない星の内部の様子を知る必要があります。 自然の法則を駆使して見えないものを「見る」、それが天文学の次のステップになります。

 光があれば影ができます。影によっても、天体や物質の存在を知ることができます。天の川に沿って、暗黒星雲と呼ばれる星の少ない暗い部分が見られます。 その正体は天の川の中にあるガスと塵の「雲」で、背景の星の光をさえぎってシルエットが見えるのです。この濃いガスや塵は新しく生まれる星の材料となり、 暗黒星雲の中に星のゆりかごができます。

 光は波ですが、その波の振動数の違いが、私たちに色の違いとして知覚されます。星の光も自然の光も様々な振動数・色の光が混じり合ったものです。 これらはプリズムなどを使って振動数の異なる光に分けることができます。振動数ごとに分けられた光の分布がスペクトルです。 私たちの目には色の異なる光の帯に見えます。例えば、雨上がりに見られる虹も、雨粒がプリズムのはたらきをして作りだした太陽光のスペクトルです。 スペクトルは光を放出する物質やその状態を示すもので、天体の最も重要な情報です。ひとみ望遠鏡に搭載されている分光器は、 このような天体のスペクトルを取得する装置です。

 光は、空間を伝わる間にも様々な現象を引き起こします。青空や夕焼けの光の源は太陽の光ですが、太陽光が地球の大気を通過する間に、 大気による散乱の効果で晴れた空を青くしたり夕方の空を赤く染めたりします。星の光も、星間空間の塵による吸収を受けて、遠い星ほど赤みを帯びてきます。

 光を放射も吸収もしない、もしそんな「無色透明」の物質があればそれを見つけることは非常に困難です。実は、宇宙にはそのような物質が大量に存在すると 考えられ、暗黒物質と呼ばれています。暗黒物質の正体は不明です。しかし、質量を持つので周囲に重力をおよぼします。光は真空中を直進しますが、重力があると 光の進路が曲げられます。重力レンズ効果です。したがって、暗黒物質が多量に存在する方向では、重力レンズ効果によって背景にある宇宙の「風景」が歪んで見えます。 この原理を利用し、遠方の銀河の歪みを観測することによって暗黒物質を調べることができます。見えない物質を観測する新しい方法です。

 光に導かれて天文学が進歩し、宇宙の理解が深まりました。さらに、現代の天文学は、目には見えないものをも光によって解き明かそうとしています。 光に親しみ、宇宙を身近に感じて頂ければ幸いです。

2013年のごあいさつ

2013年 「うつす」

 仙台市天文台では市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 仙台市天文台では毎年テーマを選んでテーマに沿った活動を行っていますが、今年のテーマは「うつす」です。

 今年のテーマは「うつす」です。「うつす」を辞書で引くと、「写す、映す、移す、遷す」など天文台の活動や宇宙に関係の深い言葉がならんでいます。今年は、このような「うつす」をテーマに様々な活動をしていきます。

 天文台の「写す」は、まず天体の写真を写すことです。ひとみ望遠鏡をはじめいろいろな望遠鏡やカメラで写した天体の写真を随時ご紹介します。最近のデジタルカメラは性能が高く、手軽に星空や天体の写真を写すことができます。皆さんにもぜひ天体の写真を写していただきたいと思います。

 今年も様々なイベントやワークショップを開催する予定ですが、文字や絵を写し取る楽しい活動もあります。そのような活動にも参加して楽しんで下さい。

 天文台の「映す」といえばプラネタリウム投映です。天文台のプラネタリウムはハイブリッド式とよばれ、光学式プラネタリウムによってシャープで美しい星空を、さらにデジタルプラネタリウムで美しい迫力ある映像をドームに映します。また、展示室では、晴れていれば太陽のライブ映像を投映しています。最近は黒点がよく現れますが、今年は黒点出現のピークがあると予想されています。黒点の位置を観察すると、日々移動し、太陽が回転していることがわかります。

 「移す」は移動・運動を表す言葉ですが、宇宙には様々な「移す」があります。惑星は恒星の間を移動しながら、留まったり逆戻りしたり不思議な動きをしますが、これは移動する地球から見ているために起こる現象です。展示室の惑星運行儀を見ると、地球と惑星の動きがわかりますが、地球から見た惑星の動きも想像してみてください。

 地球の公転運動を私たちが実感することはできませんが、地球は軌道に沿って大移動をして半年後には3億キロメートルも離れた場所に移ります。このように、地球の公転運動を利用して視点を移すと、恒星の見える方向が距離に応じてわずかに変わります。この変化を観測すると恒星の距離を知ることができます。

 地球の移動にともなって、星の見え方だけでなく、地球の季節も移り変わります。展示室では、四季のような日常の自然の移り変わりが、実は宇宙と密接につながっていることを知ることができます。

 物質だけでなく、エネルギーの移動も大切な天体の営みです。恒星の中心の核融合で発生したエネルギーは表面に向かって移動し、宇宙に放射されます。星内部のエネルギーの移動の仕方が変わると星が膨張したり、振動するなど、様々な現象が引き起こされます。

 空間だけでなく、時間にそって目を「移す」と宇宙の歴史が見えてきます。宇宙誕生から137億年、太陽や地球が誕生して46億年の時が流れました。順に目を移すと宇宙の時間発展・進化を追うことができます。

 このように、いろいろな「うつす」がありますが、自然やその仕組みを心にうつすことが自然の理解、わかることの第一歩となります。「うつす」を通じて、宇宙を楽しみ、宇宙の理解を深め、宇宙をより身近に感じて下さい。

 仙台市天文台は1955年に西公園に創設されましたが、2008年に現在地に遷され、新しい天文台に生まれ変わりました。「遷す」が新しい発展のきっかけになりました。新しい天文台も、市民の天文台として皆さんに親しんでいただければ幸いです。

2012年のごあいさつ

2012年「食」を楽しむ

 仙台市天文台では市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 仙台市天文台では毎年テーマを選んでテーマに沿った活動を行っていますが、今年のテーマは「たべる」です。

 「たべる」、「食」は私たちの生活で最も大切な活動ですが、大きな楽しみでもありあます。宇宙でも日食・月食など食の楽しみがありますが、今年ならではのメニューは5月21日の金環日食と6月6日の金星太陽面通過でしょう。

 天文学では、天体が他の天体を隠す現象を食と言いますが、星が月に隠されると星食になります。重力で引き合あう二つの星が隠し合うと、周期的に明るさが変わり、食連星・食変光星と呼ばれます。

 食物は食べると無くなってしまいますが、天体の食は、隠された天体が再び顔を見せる「いないいないばあ」の面白さがあります。食を詳しく観測すると、天体の様々な性質を知ることができますが、見えない天体の存在を確認することもできます。最近、太陽系の外に惑星がたくさん見つかっていますが、その多くは惑星が星の前面を横切るときにわずかに暗くなる食現象を利用して発見されたものです。

 食は隠すだけでなく、皆既日食のときに見られるコロナのように、ふだん見えないものを見せてくれます。しかし、いつでも食が起こるわけではないので、特殊な遮光装置で太陽や星を隠し、人工の食を起こす技術が開発されました。この技術により、まぶしい星の光を隠して、星の周囲を回る暗い惑星や惑星が生まれつつある塵の円盤などが直接観測されています。

 宇宙には、見かけの食だけではなく、重力でガスを引き寄せほんとうに食べてしまう天体もあります。星の死骸である白色矮星・中性子星・ブラックホールなどは単独では静かにしていますが、ふつうの星のすぐそばにあると、星から放出されたガスを食べて激しい活動を示すことがあります。宇宙最大の大食漢は銀河の中心にある巨大ブラックホールですが、宇宙で最も激しい爆発現象を起こしている活動銀河は食事中の巨大ブラックホールです。天体にとっても、食はエネルギー・活力の源です。

 生き物と同じように、天体も食によって成長します。惑星は軌道上の小さなかけらを食べて成長し、巨大な銀河も小さな銀河を食べて成長し現在の姿になりました。宇宙の歴史は食が生み出したものと言えるかもしれません。

 以上のように、宇宙には様々な食現象や食に例えると分かりやすい活動があります。珍味や風変わりなメニューもありますが、宇宙の食を楽しみ、科学や宇宙の理解を深めてい頂ければ幸いです。

2011年のごあいさつ

「2011年 宇宙をはかる」

宇宙は私たちにとって遠い存在に思われるかもしれませんが、実は私たちの生活や文化と密接なつながりがあります。宇宙は、意外に身近にあるのです。仙台市天文台では、「宇宙を身近に」を合言葉に、市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をしたいと考えています。宇宙が身近になる活動はいろいろあると思いますが、私は「宇宙の理解が深まって、宇宙が身近になる」ことをめざしています。

 仙台市天文台では、毎年テーマを決めて、テーマに沿った活動を行っています。今年、2011年のテーマは「宇宙をはかる」です。

 星や宇宙、天文学は古くから私たちの生活や文化に広く深く浸透してきましたが、宇宙をはかることが重要でした。たとえば、星や月や太陽の位置をはかって時や暦が定められました。身近なところでは、私たちが日常使っている長さの単位(1メートルの長さ)は地球の大きさをはかって決められたものです。

 現代の天文学は、宇宙の理解を深めるために宇宙をはかります。天体観測は文字通り天体を精密に観察し測定することです。星(恒星)は大きな望遠鏡でも小さな光の点にしか見えません。星の本当の姿、その正体を知りたい、現代の天文学はそのような疑問から始まりました。そして、星の距離や明るさをはかり、星が非常に遠方の巨大な高温のガス球、「遠方の太陽」であることを発見しました。さらに、星や銀河の距離を測ることによって銀河系や宇宙の構造が明らかになり、あるいは、星の年齢をはかることにより宇宙の歴史が解き明かされるなど、宇宙をはかることによって天文学が進歩しました。宇宙は、はかることによって本当の姿が見えてきます。

 どのように宇宙をはかり、どのように宇宙が解明されるか、皆さんと一緒に宇宙を探求したいと思います。神秘な宇宙から理解できる宇宙へ、本当の宇宙の姿を見つけてください。天文台のスタッフとも互いに理解を深めあって身近に感じていただければ幸いです。

2010年のごあいさつ

「2010年・仙台市天文台で宇宙の旅を」

 2010年というと、アーサー・C・クラークが1982年に発表した木星に旅するサイエンスフィクション『2010年宇宙の旅』が思い起こされます。 映画化され、日本でも公開されました。映画を見たとき、2010年は遠い未来のことのように思われましたが、今年がその年になりました。木星への宇宙旅行はまだ実現していませんが、無人探査機が太陽系内を詳しく探査し、探査機がもたらす天体の映像によって宇宙の旅を疑似体験できるようになりました。

 今日の宇宙の研究・天文学の発展は太陽系をはるかに超えた宇宙の果て、さらに宇宙の始まりに迫ろうとしています。もし、天文学に興味を持ち、思考力と想像力と少しの忍耐力を発揮すれば、宇宙の果てから宇宙の始まりまで、時空を超える宇宙大旅行を経験することができます。仙台市天文台を想像の宇宙船と考えて宇宙の旅を楽しんでいただきたいと思います。広大な宇宙の広がりや宇宙の歴史に触れ、私たちの存在が宇宙と密接につながっていることを発見し、宇宙を身近に感じていただけたら幸いです。

 もう一つの2010年は「国民読書年」です。平成20年の国会で、この年を「国民読書年」とすることが決議されました。文字・活字は、人類が生み出した文明の根源をなす資産であり、これを大切にし、本を読もうという趣旨です。

 私たちが直接目にできる宇宙は、宇宙のほんの一部に過ぎません。天文学の研究成果は文字・活字によって記録され、後世に伝えられます。また、天文学の周辺にある様々な文化・芸術なども本の中に見つけることができます。この機会に、お気に入りの本を手に仙台市天文台においでいただくと、宇宙を旅する良きガイドブックになると思います。

 昨年2009年は「世界天文年」、ガリレオの最初の天体観測から400年を記念するものでしたが、世界天文年を決議した国際連合の決議文にはその趣旨がおよそ次のように述べられています。

 天文学は最も古い学問として人間の文化や生活に広く深く浸透しています。そのような大切な学問ですが、天文学を学ぶ機会は限られています。そこで、天体や宇宙に親しみ、天文学を学ぶ機会を積極的に持ちましょう。

 このような世界天文年の趣旨ですが、これは仙台市天文台が目指しているもので、仙台市天文台はいつも世界天文年です。今後も皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動を続けてまいります。折に触れて仙台市天文台にご来館いただき、宇宙の旅を楽しみ、宇宙の理解を深めていただければ幸いです。

2009年のごあいさつ

「世界天文年2009によせて」

 2009年はイタリアのガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡を宇宙に向けてから400年になります。ガリレオは木星の衛星、月のクレータ、太陽黒点、天の川は多数の星の集まりであること、などを発見して新しい宇宙の扉を開きました。

 これを記念して、国際連合・ユネスコと国際天文学連合は2009年を世界天文年とすることに決めました。この機会に世界中で宇宙に親しむ活動を行い、宇宙や人間について考えようという趣旨です。仙台市天文台でも様々な記念行事が行われますが、天文学の発展と新しい宇宙の姿や謎に触れていただければと思います。

 さて、天文学の対象は、ガリレオ以後、太陽系から銀河系、広大な銀河の宇宙へと広がりました。さらに、宇宙は今から約140億年前にビッグ・バンといわれる始まりがあり、時間とともに発展・進化して今日の姿になったことが示されました。宇宙も生物と同じように、最初は非常に単純な状態で始まり、時間とともに進化したのです。私たちの存在もそのような宇宙の進化の歴史の中に位置づけることができるようになりました。

 また、天文学の歴史を振り返ると、ガリレオから始まって見えないものを見る努力の歴史でした。20世紀に入ると、可視光線では見えない天体や物質の存在が明らかになりました。塵に隠された星誕生の現場や星や銀河の活動に伴う超高温のガスなど、宇宙の理解にとって重要なものが可視光線では見えないのです。このようなものを見るために電波・X線・赤外線など様々な電磁波による天文学が発展し、宇宙の理解が飛躍的に進みました。

 しかし、20世紀後半になると、どのような電磁波でも見ることのできない物質が宇宙に多量に存在することが明らかになり、暗黒物質と呼ばれるようになりました。その量は星やガスなど通常の物質よりはるかに多く、宇宙の大部分は見えないというのです。暗黒物質はその重力によって宇宙の構造や進化を支配していますが、その正体は全く不明です。再び見えない宇宙の解明が天文学の新しい目標になりました。天文学は新しいガリレオの出現を待っているようです。

 仙台市天文台では、施設の使命を「宇宙を身近に」という言葉で表し、皆さんとともに宇宙に親しみ、理解を深めながら宇宙や自然とのより良い関係を持ちたいと考えています。世界天文年でもある今年を機会に,仙台市天文台で宇宙をより身近に感じていただければ幸いです。

2008年のごあいさつ

 仙台市天文台は市民の寄付を基に市民のための天文台として1955(昭和30)年に仙台市西公園(現青葉区桜ヶ丘公園)に誕生しました。

学校教育・社会教育・観測研究の三本柱を打ちたて、口径41cmの反射望遠鏡を活用して様々な活動を推進いたしました。以来、多くの市民ならび天文ファンに支えられ、プラネタリウムや展示室などを備えた総合的天文施設に発展し、市民のための天文台・文化教育施設として大きな役割を果たしてきました。

 長年、多くの市民に親しまれてきましたが、都市化による観測環境の悪化や施設の老朽化などの諸事情により移転整備が検討され、PFIという新しい方式によって2008年に仙台市青葉区錦ヶ丘に新しい総合天文施設として生まれ変わりました。

 新しい天文台は、口径1.3mの大型望遠鏡をはじめ、太陽望遠鏡・大型プラネタリウム・展示室・市民観察用望遠鏡など最新の設備を備えたわが国有数の総合天文施設ですが、市民の皆様に親しまれ活用されることによって生命が吹き込まれるものと考えております。これまでの仙台市天文台の理念、学校教育・社会教育・観測研究の三本の柱を大切にするとともに、市民の活動・交流の場として、いっそう市民の皆様に親しまれ活用されることを願っております。

 当施設のスタッフも、そのような願いを心に、「宇宙を身近に」をマインド・アイデンティティーとし、施設内展示を通じた交流、プラネタリウムを通じた交流、星空の観察を通じた交流、その他様々な活動を通じた交流を進めていく所存です。そして、皆様と一緒に学び、楽しみを分かち合いながら、宇宙と皆様のよき仲立ちとなりたいと考えています。

 市民の皆様にも、当スタッフとの交流や市民同士の交流を通じて、これまでの市民天文台の輪をさらに広げる活動を作りあげていただきたいと考えております。天文台は総合天文施設として、様々な活動や交流の場として、大きな可能性を秘めています。児童・生徒から成人・年輩の方まで、様々な活用の仕方があると思いますが、それぞれの夢や希望を実現するための新しい活用の仕方を発見・創造していただければと思います。

  人類は太古の昔から星や天文現象に関心を持ち、天体の観測をもとに時を決めたり、暦を作るなど、天文学は日常生活に深く浸透してきましたが、その後も現代に至るまで、天文学の影響は絵画・文学・音楽など様々な分野に及んでいます。星や宇宙の理解を通じて、文学や芸術はいっそう興味深く楽しいものになるものと思います。天文台のロビーで、星や宇宙だけでなく、芸術や文化に関する会話や議論が聞こえることも楽しみにしております。

 言うまでもなく、天文台の土台には現代の天文学があります。

最近の天文学の発展は目覚しいものがありますが、私たちの時代になって初めて宇宙の構造と進化の全体像が明らかになってきました。そして、私たちの体を構成する元素の起源や私たちの存在と宇宙の関係など、私たちの存在に関わる根本的な疑問や問題も、宇宙の進化の中にその合理的な答えを見出すことができるようになりました。皆様と一緒に、最新の宇宙像に触れ、天体や宇宙の始まりを訪ねたり、宇宙の深奥を探検することも私の楽しみとするところです。

 仙台市天文台は、仙台市の西の蕃山のふもと、泉ヶ岳を北に望む豊かな自然の中にあり、四季折々様々な姿を見せてくれます。春夏秋冬、昼も夜も、晴れの日も雨の日も、私たちの天文台には様々な楽しみがあります。折に触れ天文台を訪れ楽しんでいただければ幸いです。

 皆様のご来館、ご参加をお待ちしております。