過去の台長ごあいさつ

過去の台長ごあいさつ

2018年のごあいさつ

移転して10年、「宇宙を身近に」そして「We♡(ラブ)宇宙」へ

 仙台市天文台(以後天文台)は1955年に仙台市青葉区西公園に開台しましたが、2008年に現在地青葉区錦ケ丘に移転し、今年7月1日には移転開館から満10年を迎えます。天文台は市民との協力で誕生した市民の天文台として皆さんに親しまれて、移転後も学校教育・社会教育・生涯学習施設として広く市民に活用していただいております。本年初頭に延べ入館者数が300万に達する見込みです。

 この10年を振り返ると、開館時の想定を超えた賑わい、3.11東日本大震災、市民の活動の広がり、地域の教育研究機関との連携協力、さらに天文台学習で学んだ児童生徒さんの成長など、市民の天文台としての成長を見ることができます。

 新天文台の開館にあたり、施設のミッション(果たすべき使命・役割)を分かりやすい言葉で表現しようと考え「宇宙を身近に」という言葉を掲げました。皆さんに宇宙を身近に感じていただけるような活動をしようという趣旨ですが、今後もこの「初心」を大切にしたいと考えています。宇宙が身近に感じられるようになる活動はいろいろありますが、私は宇宙の理解が深まって身近に感じられるようになることを願っています。

 このミッションを実現するために、天文台では3年ごとに中期目標を設定し活動の指針としています。先期は、皆さんに「We♡天文台」と言っていただけるような愛される天文台を目標としましたが、今期(昨年から)は、皆さんがさらに宇宙が好きになることを願って「We♡宇宙」という言葉で表現しました。

 天文台は、施設の長期計画の中で10年ごとに展示を更新することになっていますが、今年がその更新の年に当たります。これまで、利用者やスタッフサポーターの声、経験、さらに天文学の進歩などを考慮して更新のプランを練ってきました。新しい展示では、親しみやすく楽しい展示とともに、より広く深く宇宙に触れていただけるような展示を目指しています。展示更新にともなう工事が1月から3月にかけて行われ皆様にご迷惑をおかけしますが、4月には新しい展示室をご披露したいと考えています。この機会に、皆さんにも宇宙のイメージを更新していただき「We♡宇宙」と言っていただけることを願っています。

 今年も様々な天文現象がありますが、特に、1月31日の皆既月食と7月から8月にかけての火星大接近が注目されます。天文台では、定例の観望会とともに天文現象にあわせた観望会も計画しています。プラネタリウムや展示室で時空を超えた宇宙をお楽しみいただき、天体観望会ではひとみ望遠鏡を通して直接リアルな宇宙にふれていただきたいと思います。

2017年のごあいさつ

2017年「We♡(ラブ) 天文台」から「We♡(ラブ) 宇宙」へ

 仙台市天文台(以後天文台)は1955年に仙台市青葉区西公園に開台しましたが、2008年に現在地青葉区錦ケ丘に移転し今年10年目を迎えます。天文台は市民との協力で誕生した市民の天文台として皆さんに親しまれてきました。それを引き継ぐ形で、移転とともにスタッフも設備も一新し、新しい天文台に生まれ変わりました。学校教育・社会教育・生涯学習施設として広く市民に活用していただき、昨年末で延べ入館者数が270万を超え、来年2018年には300万に達する見込みです。

 新天文台の開館にあたり、施設のミッション(果たすべき使命・役割)を分かりやすい言葉で表現しようと考え「宇宙を身近に」という言葉を掲げました。皆さんに宇宙を身近に感じていただけるような活動をしようという趣旨です。宇宙が身近に感じられるようになる活動はいろいろありますが、私は宇宙の理解が深まって身近に感じられるようになることを願っています。

 このミッションを実現するために、天文台では3年ごとに中期目標を設定し活動の指針としています。昨年までの3年間は、皆さんに「We♡天文台」と言っていただけるような愛される天文台を目標としました。この3年間「We♡天文台」を合言葉に活動してきましたが、幸い多くの方々に来館いただき、また市民による様々な活動も活発に行われ、この中期目標が達成されたと感じています。

 昨年、スタッフ全員で次の3年間の中期目標を議論してきました。そして天文台を愛してくださる皆さんがさらに宇宙が好きになることを願って「We♡宇宙」という言葉を選びました。皆さんに、もっと宇宙が身近になって「We♡宇宙」と言っていただけるような天文台をめざします。

 プラネタリウムの映像や天体写真は美しく、時に神秘的に見えますが、その背後のリアルな宇宙を想像することも楽しく興味深いことです。また、天文台で土曜日の夜開催される天体観望会では、ひとみ望遠鏡を通してリアルな宇宙に直接触れることができます。さらに、展示室では、望遠鏡で見た小さな赤い光の点が実は晩年を迎えた巨大な星であることや、小さな淡い光の雲の正体が数千万光年かなたに数千億の星が集まった銀河であることなど、奥深い宇宙の仕組みや営みを知ることができます。天文台ではこのようにリアルな宇宙に触れる機会を用意し、皆さんがお気に入りの宇宙に出会えることを願っています。

 天文台は、施設の長期計画の中で10年ごとに展示の更新を行うことになっており、来年がその更新の年に当たります。今年は、これまで練ってきた更新プランを具体的に実行し、来年の4月には新しい展示室をご披露したいと考えています。この機会に、天文台を愛してくださる皆さんにも宇宙のイメージを更新していただき「We♡宇宙」と言っていただけることを願っています。

2016年のごあいさつ

2016年 「宮沢賢治」

 仙台市天文台では市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。様々な活動を通じて宇宙の理解が深まり、宇宙が身近になることを願っています。その一助として毎年テーマを設け活動の指針としています。

 2016年度のテーマは宮沢賢治生誕120年を記念して「宮沢賢治」です。

 私は「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」で初めて宮沢賢治に出会いましたが、賢治の作品を読むようになり、様々な人物やキャラクターに出会いました。その中で最も親近感を覚えるのは『虔十(けんじゅう)公園林』の主人公虔十少年です。「風がどうと吹いてぶなの葉がチラチラ光るときなどは虔十はもううれしくてうれしくてひとりでに笑えて仕方ない」という少年です。私も幼少のころ星に親しむようになり、東の空に目当ての星が昇ってくるのを見て「うれしくてひとりでに笑えて仕方ない」時がありました。今もその時のことを思い出すとうれしくなります。

 虔十少年は幼くして亡くなりましたが、私は成長して『銀河鉄道の夜』を読むようになりました。主人公ジョバンニと親友カムパネルラとの交流や美しいファンタジーの世界に引き込まれ賢治の宇宙を旅しました。不思議な物語が展開しますが、物語を読み解こうとすれば賢治の心の宇宙を探究することになります。

 昔、神の意思が天に現れると考え、天文学者は天の文様を読み解き神意を知ろうとしましたが、やがて天文学は宇宙を科学的に探究する学問になり広大な宇宙を発見しました。賢治の物語も、歳を重ねるごとに読み返すと、彼の心の宇宙がより深く広がっていることを発見します。

 賢治の物語には天の川や様々な星が登場しますが、その由来を考えると自然の宇宙につながります。天の川や美しい星空は光害のために都会では出会うことが難しくなりましたが、よく晴れた夜には天文台の惑星広場でも見ることができます。プラネタリウムでは賢治が見たであろう天の川や満天の星を疑似体験することができます。また、天体観望会ではひとみ望遠鏡を覗(のぞ)いて星や天体のリアルな姿を見ることができます。さらに展示室では目に見えない星や天体について学ぶことができます。

 賢治の物語を読むと、深い孤独や悲しい別れに胸が痛むことがありますが、一方、虔十少年の豊かな感性、カムパネルラやジョバンニの思いやりのあるたくましい心、あるいは豊かな自然との交感などに出会うと希望が湧いてきます。賢治は37歳という若さで世を去りましたが、私たちの心に多くの希望の種を残してくれました。そのような希望の種を虔十少年のように大切に育てる、「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と思います。

 賢治は豊かな自然の中で宇宙を身近に感じながらイメージを膨らませて理想郷イーハトーブを夢見ました。皆さんにも天文台で思う存分イメージを膨らませいただければ幸いです。私は、天文台の惑星広場が賢治が夢見たイーハトーブの広場のようになることを夢見ています。

仙台市天文台台長

2015年のごあいさつ

2015年 「起源」

 仙台市天文台では市民の皆様が宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 今年のテーマは「起源」、物事の「起こり・始まり・ルーツ」です。自然や宇宙、あるいは関連する生活・文化の起源を探究してみましょう。

 起源を考えるとき、最も重要な出来事は「誕生」です。どのような生き物も、誕生の瞬間は感動的です。星・恒星の形成過程にも「誕生」という言葉が使われますが、劇的で興味深いものです。

 星は銀河系の中で絶えず生まれていますが、その始まりは星間ガスの重力による収縮です。つぶれたガス球の中心で核融合反応が起こりエネルギーが放出されると、ガス球は高温になって自から輝き始めます。星の誕生です。この過程は母体となった周囲のガスや塵に隠されて可視光ではほとんど見ることができませんが、直接観測できる電波や赤外線によって解明が進んでいます。

 銀河系には新しい星、古い星などいろいろな世代の星が集まっています。星を調べると星が誕生した時代の銀河系の様子がわかります。銀河系が誕生した頃に生まれた古い星は、銀河系の起源を教えてくれる「生きた化石」です。こうした古い天体を「発掘」する銀河系の「考古学」は、銀河系の起源を解明する有力な方法です。

 星や人体を構成する元素の起源も興味深いものです。私たちの体はいろいろな元素が集まっていますが、その起源をたどるとむかし宇宙に輝いた星にたどり着きます。これらの元素は星の中心部の核融合反応によって合成され、星の一生の終わりに宇宙にまき散らされたものですが、星間ガスに混じりあって新しい星の材料となりました。そのような元素を集めて太陽や地球が誕生し、その一部が私たちの体に集まっているのです。これらの元素の原料となった元素は、最も簡単な元素の水素ですが、その起源は宇宙の始まりビッグバンにさかのぼります。このように、元素の起源を考えると、私たちの体にはビッグバンに始まる宇宙の歴史が刻まれていることがわかります。

 地球には宇宙から様々な物質がやってきますが、それらの起源も興味深いものです。流星は地球に高速で飛び込んできた宇宙の塵ですが、その起源は彗星がまき散らした塵です。オーロラを輝かせた粒子は太陽風にのって太陽のコロナからやってきました。このような物質の起源をたどると、地球は広く宇宙につながっていることがわかります。

 天体の起源を考えるとき、その誕生には必要な条件があります。地球の誕生には太陽が必要でした。太陽の誕生には銀河系という環境が必要でした。そして銀河系の誕生には、それを可能にする宇宙が必要でした。こうして起源をつきつめると宇宙全体の始まりにたどり着きます。

 宇宙の探究は起源を求める旅のようです。宇宙の時空の広がりと豊かさを考えると、この旅は人類にとって終わりのない旅になりそうです。

2014年のごあいさつ

2014年 「光」

 仙台市天文台では市民の皆様が宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 私たちはいろいろな光の中で暮らしています。五感の最初に挙げられる視覚は、光によって外界を感知する最も基本的な感覚です。この文章も、お読み頂いている方に、視覚を通して訴えるものです。

 光は周囲が暗いほど明るく輝いて見えます。東日本大震災で停電の夜、暗闇の中の一本のキャンドルの明るさに驚き感動したことを思い出します。 都会では光害で見えにくくなった星の光も、光害のない暗い夜空では驚くほど明るく輝いて見えます。星は夜空に輝く小さな光の点ですが、光を調べると、 その正体は太陽のように膨大なエネルギーを放射する巨大な高温のガス球であることがわかります。しかし、星の光は星の表面の様子を伝えるもので、 その膨大なエネルギーの源を知ることはできません。その解明には、外からは見えない星の内部の様子を知る必要があります。 自然の法則を駆使して見えないものを「見る」、それが天文学の次のステップになります。

 光があれば影ができます。影によっても、天体や物質の存在を知ることができます。天の川に沿って、暗黒星雲と呼ばれる星の少ない暗い部分が見られます。 その正体は天の川の中にあるガスと塵の「雲」で、背景の星の光をさえぎってシルエットが見えるのです。この濃いガスや塵は新しく生まれる星の材料となり、 暗黒星雲の中に星のゆりかごができます。

 光は波ですが、その波の振動数の違いが、私たちに色の違いとして知覚されます。星の光も自然の光も様々な振動数・色の光が混じり合ったものです。 これらはプリズムなどを使って振動数の異なる光に分けることができます。振動数ごとに分けられた光の分布がスペクトルです。 私たちの目には色の異なる光の帯に見えます。例えば、雨上がりに見られる虹も、雨粒がプリズムのはたらきをして作りだした太陽光のスペクトルです。 スペクトルは光を放出する物質やその状態を示すもので、天体の最も重要な情報です。ひとみ望遠鏡に搭載されている分光器は、 このような天体のスペクトルを取得する装置です。

 光は、空間を伝わる間にも様々な現象を引き起こします。青空や夕焼けの光の源は太陽の光ですが、太陽光が地球の大気を通過する間に、 大気による散乱の効果で晴れた空を青くしたり夕方の空を赤く染めたりします。星の光も、星間空間の塵による吸収を受けて、遠い星ほど赤みを帯びてきます。

 光を放射も吸収もしない、もしそんな「無色透明」の物質があればそれを見つけることは非常に困難です。実は、宇宙にはそのような物質が大量に存在すると 考えられ、暗黒物質と呼ばれています。暗黒物質の正体は不明です。しかし、質量を持つので周囲に重力をおよぼします。光は真空中を直進しますが、重力があると 光の進路が曲げられます。重力レンズ効果です。したがって、暗黒物質が多量に存在する方向では、重力レンズ効果によって背景にある宇宙の「風景」が歪んで見えます。 この原理を利用し、遠方の銀河の歪みを観測することによって暗黒物質を調べることができます。見えない物質を観測する新しい方法です。

 光に導かれて天文学が進歩し、宇宙の理解が深まりました。さらに、現代の天文学は、目には見えないものをも光によって解き明かそうとしています。 光に親しみ、宇宙を身近に感じて頂ければ幸いです。

2013年のごあいさつ

2013年 「うつす」

 仙台市天文台では市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 仙台市天文台では毎年テーマを選んでテーマに沿った活動を行っていますが、今年のテーマは「うつす」です。

 今年のテーマは「うつす」です。「うつす」を辞書で引くと、「写す、映す、移す、遷す」など天文台の活動や宇宙に関係の深い言葉がならんでいます。今年は、このような「うつす」をテーマに様々な活動をしていきます。

 天文台の「写す」は、まず天体の写真を写すことです。ひとみ望遠鏡をはじめいろいろな望遠鏡やカメラで写した天体の写真を随時ご紹介します。最近のデジタルカメラは性能が高く、手軽に星空や天体の写真を写すことができます。皆さんにもぜひ天体の写真を写していただきたいと思います。

 今年も様々なイベントやワークショップを開催する予定ですが、文字や絵を写し取る楽しい活動もあります。そのような活動にも参加して楽しんで下さい。

 天文台の「映す」といえばプラネタリウム投映です。天文台のプラネタリウムはハイブリッド式とよばれ、光学式プラネタリウムによってシャープで美しい星空を、さらにデジタルプラネタリウムで美しい迫力ある映像をドームに映します。また、展示室では、晴れていれば太陽のライブ映像を投映しています。最近は黒点がよく現れますが、今年は黒点出現のピークがあると予想されています。黒点の位置を観察すると、日々移動し、太陽が回転していることがわかります。

 「移す」は移動・運動を表す言葉ですが、宇宙には様々な「移す」があります。惑星は恒星の間を移動しながら、留まったり逆戻りしたり不思議な動きをしますが、これは移動する地球から見ているために起こる現象です。展示室の惑星運行儀を見ると、地球と惑星の動きがわかりますが、地球から見た惑星の動きも想像してみてください。

 地球の公転運動を私たちが実感することはできませんが、地球は軌道に沿って大移動をして半年後には3億キロメートルも離れた場所に移ります。このように、地球の公転運動を利用して視点を移すと、恒星の見える方向が距離に応じてわずかに変わります。この変化を観測すると恒星の距離を知ることができます。

 地球の移動にともなって、星の見え方だけでなく、地球の季節も移り変わります。展示室では、四季のような日常の自然の移り変わりが、実は宇宙と密接につながっていることを知ることができます。

 物質だけでなく、エネルギーの移動も大切な天体の営みです。恒星の中心の核融合で発生したエネルギーは表面に向かって移動し、宇宙に放射されます。星内部のエネルギーの移動の仕方が変わると星が膨張したり、振動するなど、様々な現象が引き起こされます。

 空間だけでなく、時間にそって目を「移す」と宇宙の歴史が見えてきます。宇宙誕生から137億年、太陽や地球が誕生して46億年の時が流れました。順に目を移すと宇宙の時間発展・進化を追うことができます。

 このように、いろいろな「うつす」がありますが、自然やその仕組みを心にうつすことが自然の理解、わかることの第一歩となります。「うつす」を通じて、宇宙を楽しみ、宇宙の理解を深め、宇宙をより身近に感じて下さい。

 仙台市天文台は1955年に西公園に創設されましたが、2008年に現在地に遷され、新しい天文台に生まれ変わりました。「遷す」が新しい発展のきっかけになりました。新しい天文台も、市民の天文台として皆さんに親しんでいただければ幸いです。

2012年のごあいさつ

2012年「食」を楽しむ

 仙台市天文台では市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をめざしています。宇宙が身近に感じられる活動は様々ですが、私は宇宙の理解が深まって宇宙が身近になることを願っています。

 仙台市天文台では毎年テーマを選んでテーマに沿った活動を行っていますが、今年のテーマは「たべる」です。

 「たべる」、「食」は私たちの生活で最も大切な活動ですが、大きな楽しみでもありあます。宇宙でも日食・月食など食の楽しみがありますが、今年ならではのメニューは5月21日の金環日食と6月6日の金星太陽面通過でしょう。

 天文学では、天体が他の天体を隠す現象を食と言いますが、星が月に隠されると星食になります。重力で引き合あう二つの星が隠し合うと、周期的に明るさが変わり、食連星・食変光星と呼ばれます。

 食物は食べると無くなってしまいますが、天体の食は、隠された天体が再び顔を見せる「いないいないばあ」の面白さがあります。食を詳しく観測すると、天体の様々な性質を知ることができますが、見えない天体の存在を確認することもできます。最近、太陽系の外に惑星がたくさん見つかっていますが、その多くは惑星が星の前面を横切るときにわずかに暗くなる食現象を利用して発見されたものです。

 食は隠すだけでなく、皆既日食のときに見られるコロナのように、ふだん見えないものを見せてくれます。しかし、いつでも食が起こるわけではないので、特殊な遮光装置で太陽や星を隠し、人工の食を起こす技術が開発されました。この技術により、まぶしい星の光を隠して、星の周囲を回る暗い惑星や惑星が生まれつつある塵の円盤などが直接観測されています。

 宇宙には、見かけの食だけではなく、重力でガスを引き寄せほんとうに食べてしまう天体もあります。星の死骸である白色矮星・中性子星・ブラックホールなどは単独では静かにしていますが、ふつうの星のすぐそばにあると、星から放出されたガスを食べて激しい活動を示すことがあります。宇宙最大の大食漢は銀河の中心にある巨大ブラックホールですが、宇宙で最も激しい爆発現象を起こしている活動銀河は食事中の巨大ブラックホールです。天体にとっても、食はエネルギー・活力の源です。

 生き物と同じように、天体も食によって成長します。惑星は軌道上の小さなかけらを食べて成長し、巨大な銀河も小さな銀河を食べて成長し現在の姿になりました。宇宙の歴史は食が生み出したものと言えるかもしれません。

 以上のように、宇宙には様々な食現象や食に例えると分かりやすい活動があります。珍味や風変わりなメニューもありますが、宇宙の食を楽しみ、科学や宇宙の理解を深めてい頂ければ幸いです。

2011年のごあいさつ

「2011年 宇宙をはかる」

宇宙は私たちにとって遠い存在に思われるかもしれませんが、実は私たちの生活や文化と密接なつながりがあります。宇宙は、意外に身近にあるのです。仙台市天文台では、「宇宙を身近に」を合言葉に、市民の皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動をしたいと考えています。宇宙が身近になる活動はいろいろあると思いますが、私は「宇宙の理解が深まって、宇宙が身近になる」ことをめざしています。

 仙台市天文台では、毎年テーマを決めて、テーマに沿った活動を行っています。今年、2011年のテーマは「宇宙をはかる」です。

 星や宇宙、天文学は古くから私たちの生活や文化に広く深く浸透してきましたが、宇宙をはかることが重要でした。たとえば、星や月や太陽の位置をはかって時や暦が定められました。身近なところでは、私たちが日常使っている長さの単位(1メートルの長さ)は地球の大きさをはかって決められたものです。

 現代の天文学は、宇宙の理解を深めるために宇宙をはかります。天体観測は文字通り天体を精密に観察し測定することです。星(恒星)は大きな望遠鏡でも小さな光の点にしか見えません。星の本当の姿、その正体を知りたい、現代の天文学はそのような疑問から始まりました。そして、星の距離や明るさをはかり、星が非常に遠方の巨大な高温のガス球、「遠方の太陽」であることを発見しました。さらに、星や銀河の距離を測ることによって銀河系や宇宙の構造が明らかになり、あるいは、星の年齢をはかることにより宇宙の歴史が解き明かされるなど、宇宙をはかることによって天文学が進歩しました。宇宙は、はかることによって本当の姿が見えてきます。

 どのように宇宙をはかり、どのように宇宙が解明されるか、皆さんと一緒に宇宙を探求したいと思います。神秘な宇宙から理解できる宇宙へ、本当の宇宙の姿を見つけてください。天文台のスタッフとも互いに理解を深めあって身近に感じていただければ幸いです。

2010年のごあいさつ

「2010年・仙台市天文台で宇宙の旅を」

 2010年というと、アーサー・C・クラークが1982年に発表した木星に旅するサイエンスフィクション『2010年宇宙の旅』が思い起こされます。 映画化され、日本でも公開されました。映画を見たとき、2010年は遠い未来のことのように思われましたが、今年がその年になりました。木星への宇宙旅行はまだ実現していませんが、無人探査機が太陽系内を詳しく探査し、探査機がもたらす天体の映像によって宇宙の旅を疑似体験できるようになりました。

 今日の宇宙の研究・天文学の発展は太陽系をはるかに超えた宇宙の果て、さらに宇宙の始まりに迫ろうとしています。もし、天文学に興味を持ち、思考力と想像力と少しの忍耐力を発揮すれば、宇宙の果てから宇宙の始まりまで、時空を超える宇宙大旅行を経験することができます。仙台市天文台を想像の宇宙船と考えて宇宙の旅を楽しんでいただきたいと思います。広大な宇宙の広がりや宇宙の歴史に触れ、私たちの存在が宇宙と密接につながっていることを発見し、宇宙を身近に感じていただけたら幸いです。

 もう一つの2010年は「国民読書年」です。平成20年の国会で、この年を「国民読書年」とすることが決議されました。文字・活字は、人類が生み出した文明の根源をなす資産であり、これを大切にし、本を読もうという趣旨です。

 私たちが直接目にできる宇宙は、宇宙のほんの一部に過ぎません。天文学の研究成果は文字・活字によって記録され、後世に伝えられます。また、天文学の周辺にある様々な文化・芸術なども本の中に見つけることができます。この機会に、お気に入りの本を手に仙台市天文台においでいただくと、宇宙を旅する良きガイドブックになると思います。

 昨年2009年は「世界天文年」、ガリレオの最初の天体観測から400年を記念するものでしたが、世界天文年を決議した国際連合の決議文にはその趣旨がおよそ次のように述べられています。

 天文学は最も古い学問として人間の文化や生活に広く深く浸透しています。そのような大切な学問ですが、天文学を学ぶ機会は限られています。そこで、天体や宇宙に親しみ、天文学を学ぶ機会を積極的に持ちましょう。

 このような世界天文年の趣旨ですが、これは仙台市天文台が目指しているもので、仙台市天文台はいつも世界天文年です。今後も皆様に宇宙を身近に感じていただけるような活動を続けてまいります。折に触れて仙台市天文台にご来館いただき、宇宙の旅を楽しみ、宇宙の理解を深めていただければ幸いです。

2009年のごあいさつ

「世界天文年2009によせて」

 2009年はイタリアのガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡を宇宙に向けてから400年になります。ガリレオは木星の衛星、月のクレータ、太陽黒点、天の川は多数の星の集まりであること、などを発見して新しい宇宙の扉を開きました。

 これを記念して、国際連合・ユネスコと国際天文学連合は2009年を世界天文年とすることに決めました。この機会に世界中で宇宙に親しむ活動を行い、宇宙や人間について考えようという趣旨です。仙台市天文台でも様々な記念行事が行われますが、天文学の発展と新しい宇宙の姿や謎に触れていただければと思います。

 さて、天文学の対象は、ガリレオ以後、太陽系から銀河系、広大な銀河の宇宙へと広がりました。さらに、宇宙は今から約140億年前にビッグ・バンといわれる始まりがあり、時間とともに発展・進化して今日の姿になったことが示されました。宇宙も生物と同じように、最初は非常に単純な状態で始まり、時間とともに進化したのです。私たちの存在もそのような宇宙の進化の歴史の中に位置づけることができるようになりました。

 また、天文学の歴史を振り返ると、ガリレオから始まって見えないものを見る努力の歴史でした。20世紀に入ると、可視光線では見えない天体や物質の存在が明らかになりました。塵に隠された星誕生の現場や星や銀河の活動に伴う超高温のガスなど、宇宙の理解にとって重要なものが可視光線では見えないのです。このようなものを見るために電波・X線・赤外線など様々な電磁波による天文学が発展し、宇宙の理解が飛躍的に進みました。

 しかし、20世紀後半になると、どのような電磁波でも見ることのできない物質が宇宙に多量に存在することが明らかになり、暗黒物質と呼ばれるようになりました。その量は星やガスなど通常の物質よりはるかに多く、宇宙の大部分は見えないというのです。暗黒物質はその重力によって宇宙の構造や進化を支配していますが、その正体は全く不明です。再び見えない宇宙の解明が天文学の新しい目標になりました。天文学は新しいガリレオの出現を待っているようです。

 仙台市天文台では、施設の使命を「宇宙を身近に」という言葉で表し、皆さんとともに宇宙に親しみ、理解を深めながら宇宙や自然とのより良い関係を持ちたいと考えています。世界天文年でもある今年を機会に,仙台市天文台で宇宙をより身近に感じていただければ幸いです。

2008年のごあいさつ

 仙台市天文台は市民の寄付を基に市民のための天文台として1955(昭和30)年に仙台市西公園(現青葉区桜ヶ丘公園)に誕生しました。

学校教育・社会教育・観測研究の三本柱を打ちたて、口径41cmの反射望遠鏡を活用して様々な活動を推進いたしました。以来、多くの市民ならび天文ファンに支えられ、プラネタリウムや展示室などを備えた総合的天文施設に発展し、市民のための天文台・文化教育施設として大きな役割を果たしてきました。

 長年、多くの市民に親しまれてきましたが、都市化による観測環境の悪化や施設の老朽化などの諸事情により移転整備が検討され、PFIという新しい方式によって2008年に仙台市青葉区錦ヶ丘に新しい総合天文施設として生まれ変わりました。

 新しい天文台は、口径1.3mの大型望遠鏡をはじめ、太陽望遠鏡・大型プラネタリウム・展示室・市民観察用望遠鏡など最新の設備を備えたわが国有数の総合天文施設ですが、市民の皆様に親しまれ活用されることによって生命が吹き込まれるものと考えております。これまでの仙台市天文台の理念、学校教育・社会教育・観測研究の三本の柱を大切にするとともに、市民の活動・交流の場として、いっそう市民の皆様に親しまれ活用されることを願っております。

 当施設のスタッフも、そのような願いを心に、「宇宙を身近に」をマインド・アイデンティティーとし、施設内展示を通じた交流、プラネタリウムを通じた交流、星空の観察を通じた交流、その他様々な活動を通じた交流を進めていく所存です。そして、皆様と一緒に学び、楽しみを分かち合いながら、宇宙と皆様のよき仲立ちとなりたいと考えています。

 市民の皆様にも、当スタッフとの交流や市民同士の交流を通じて、これまでの市民天文台の輪をさらに広げる活動を作りあげていただきたいと考えております。天文台は総合天文施設として、様々な活動や交流の場として、大きな可能性を秘めています。児童・生徒から成人・年輩の方まで、様々な活用の仕方があると思いますが、それぞれの夢や希望を実現するための新しい活用の仕方を発見・創造していただければと思います。

  人類は太古の昔から星や天文現象に関心を持ち、天体の観測をもとに時を決めたり、暦を作るなど、天文学は日常生活に深く浸透してきましたが、その後も現代に至るまで、天文学の影響は絵画・文学・音楽など様々な分野に及んでいます。星や宇宙の理解を通じて、文学や芸術はいっそう興味深く楽しいものになるものと思います。天文台のロビーで、星や宇宙だけでなく、芸術や文化に関する会話や議論が聞こえることも楽しみにしております。

 言うまでもなく、天文台の土台には現代の天文学があります。

最近の天文学の発展は目覚しいものがありますが、私たちの時代になって初めて宇宙の構造と進化の全体像が明らかになってきました。そして、私たちの体を構成する元素の起源や私たちの存在と宇宙の関係など、私たちの存在に関わる根本的な疑問や問題も、宇宙の進化の中にその合理的な答えを見出すことができるようになりました。皆様と一緒に、最新の宇宙像に触れ、天体や宇宙の始まりを訪ねたり、宇宙の深奥を探検することも私の楽しみとするところです。

 仙台市天文台は、仙台市の西の蕃山のふもと、泉ヶ岳を北に望む豊かな自然の中にあり、四季折々様々な姿を見せてくれます。春夏秋冬、昼も夜も、晴れの日も雨の日も、私たちの天文台には様々な楽しみがあります。折に触れ天文台を訪れ楽しんでいただければ幸いです。

 皆様のご来館、ご参加をお待ちしております。