仙台市天文台について

台長からの2009年のご挨拶

「世界天文年2009によせて」

 2009年はイタリアのガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡を宇宙に向けてから400年になります。ガリレオは木星の衛星、月のクレータ、太陽黒点、天の川は多数の星の集まりであること、などを発見して新しい宇宙の扉を開きました。
 
 これを記念して、国際連合・ユネスコと国際天文学連合は2009年を世界天文年とすることに決めました。この機会に世界中で宇宙に親しむ活動を行い、宇宙や人間について考えようという趣旨です。仙台市天文台でも様々な記念行事が行われますが、天文学の発展と新しい宇宙の姿や謎に触れていただければと思います。

 

 さて、天文学の対象は、ガリレオ以後、太陽系から銀河系、広大な銀河の宇宙へと広がりました。さらに、宇宙は今から約140億年前にビッグ・バンといわれる始まりがあり、時間とともに発展・進化して今日の姿になったことが示されました。宇宙も生物と同じように、最初は非常に単純な状態で始まり、時間とともに進化したのです。私たちの存在もそのような宇宙の進化の歴史の中に位置づけることができるようになりました。
 
 また、天文学の歴史を振り返ると、ガリレオから始まって見えないものを見る努力の歴史でした。20世紀に入ると、可視光線では見えない天体や物質の存在が明らかになりました。塵に隠された星誕生の現場や星や銀河の活動に伴う超高温のガスなど、宇宙の理解にとって重要なものが可視光線では見えないのです。このようなものを見るために電波・X線・赤外線など様々な電磁波による天文学が発展し、宇宙の理解が飛躍的に進みました。
 
 しかし、20世紀後半になると、どのような電磁波でも見ることのできない物質が宇宙に多量に存在することが明らかになり、暗黒物質と呼ばれるようになりました。その量は星やガスなど通常の物質よりはるかに多く、宇宙の大部分は見えないというのです。暗黒物質はその重力によって宇宙の構造や進化を支配していますが、その正体は全く不明です。再び見えない宇宙の解明が天文学の新しい目標になりました。天文学は新しいガリレオの出現を待っているようです。

 

 仙台市天文台では、施設の使命を「宇宙を身近に」という言葉で表し、皆さんとともに宇宙に親しみ、理解を深めながら宇宙や自然とのより良い関係を持ちたいと考えています。世界天文年でもある今年を機会に,仙台市天文台で宇宙をより身近に感じていただければ幸いです。

 

  仙台市天文台台長
土佐誠 サイン

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