台長からのご挨拶
仙台市天文台は市民の寄付を基に市民のための天文台として1955(昭和30)年に仙台市西公園(現青葉区桜ヶ丘公園)に誕生しました。
学校教育・社会教育・観測研究の三本柱を打ちたて、口径41cmの反射望遠鏡を活用して様々な活動を推進いたしました。以来、多くの市民ならび天文ファンに支えられ、プラネタリウムや展示室などを備えた総合的天文施設に発展し、市民のための天文台・文化教育施設として大きな役割を果たしてきました。
長年、多くの市民に親しまれてきましたが、都市化による観測環境の悪化や施設の老朽化などの諸事情により移転整備が検討され、PFIという新しい方式によって2008年に仙台市青葉区錦ヶ丘に新しい総合天文施設として生まれ変わりました。
新しい天文台は、口径1.3mの大型望遠鏡をはじめ、太陽望遠鏡・大型プラネタリウム・展示室・市民観察用望遠鏡など最新の設備を備えたわが国有数の総合天文施設ですが、市民の皆様に親しまれ活用されることによって生命が吹き込まれるものと考えております。これまでの仙台市天文台の理念、学校教育・社会教育・観測研究の三本の柱を大切にするとともに、市民の活動・交流の場として、いっそう市民の皆様に親しまれ活用されることを願っております。
当施設のスタッフも、そのような願いを心に、「宇宙を身近に」をマインド・アイデンティティーとし、施設内展示を通じた交流、プラネタリウムを通じた交流、星空の観察を通じた交流、その他様々な活動を通じた交流を進めていく所存です。そして、皆様と一緒に学び、楽しみを分かち合いながら、宇宙と皆様のよき仲立ちとなりたいと考えています。
市民の皆様にも、当スタッフとの交流や市民同士の交流を通じて、これまでの市民天文台の輪をさらに広げる活動を作りあげていただきたいと考えております。天文台は総合天文施設として、様々な活動や交流の場として、大きな可能性を秘めています。児童・生徒から成人・年輩の方まで、様々な活用の仕方があると思いますが、それぞれの夢や希望を実現するための新しい活用の仕方を発見・創造していただければと思います。
人類は太古の昔から星や天文現象に関心を持ち、天体の観測をもとに時を決めたり、暦を作るなど、天文学は日常生活に深く浸透してきましたが、その後も現代に至るまで、天文学の影響は絵画・文学・音楽など様々な分野に及んでいます。星や宇宙の理解を通じて、文学や芸術はいっそう興味深く楽しいものになるものと思います。天文台のロビーで、星や宇宙だけでなく、芸術や文化に関する会話や議論が聞こえることも楽しみにしております。
言うまでもなく、天文台の土台には現代の天文学があります。
最近の天文学の発展は目覚しいものがありますが、私たちの時代になって初めて宇宙の構造と進化の全体像が明らかになってきました。そして、私たちの体を構成する元素の起源や私たちの存在と宇宙の関係など、私たちの存在に関わる根本的な疑問や問題も、宇宙の進化の中にその合理的な答えを見出すことができるようになりました。皆様と一緒に、最新の宇宙像に触れ、天体や宇宙の始まりを訪ねたり、宇宙の深奥を探検することも私の楽しみとするところです。
仙台市天文台は、仙台市の西の蕃山のふもと、泉ヶ岳を北に望む豊かな自然の中にあり、四季折々様々な姿を見せてくれます。春夏秋冬、昼も夜も、晴れの日も雨の日も、私たちの天文台には様々な楽しみがあります。折に触れ天文台を訪れ楽しんでいただければ幸いです。
皆様のご来館、ご参加をお待ちしております。
2008年7月1日
仙台市天文台台長