仙台市天文台×東北大学大学院理学研究科公開サイエンス講座2021年度第2回「太陽系外惑星:第2の地球の探査」

 2022年1月23日(日)、仙台市天文台×東北大学大学院理学研究科公開サイエンス講座2021年度第2回「太陽系外惑星:第2の地球の探査」を開催しました。このサイエンス講座は連携協定を締結している東北大学大学院理学研究科とのコラボレーション企画で、年に数回講座や講演会を開催しています。

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 2021年度第2回目は、2022年1月23日(日)に仙台市天文台の加藤・小坂ホールにて講演会を開催し、24名の方々にご参加いただきました。講師に東北大学大学院理学研究科の田中秀和教授(天文学専攻)をお招きし、太陽系外惑星の基礎的な知識から最近の研究成果などについて、クイズや画像を交えながらご紹介いただきました。

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 ご参加いただいた方々は熱心にメモを取る様子や時々頷きながら耳を傾けている様子が見られ、関心の高さが窺えました。講演中だけでなく講演後やアンケート用紙にもたくさんのご質問をお寄せいただきました。

 ご講演いただいた田中先生、また、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!

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 ここでは、アンケート用紙にお寄せいただいたご質問の一部をご紹介すると共に、田中先生から頂戴した回答を掲載いたします。

Q1:ホットジュピターは木星のように遠方でつくられてから恒星に近づいてホットジュピターになると考えていたのですが、木星は土星の重力でホットジュピターにならなかったというのは本当なのですか?

A1:確かに、ホットジュピターは木星のように、中心部の恒星から遠く離れたところで誕生し、その後恒星に近づいたと考えられています。しかし、太陽系の木星は遠くのままなので、なぜ木星とホットジュピターの間で大きく異なってしまったのかは、今も議論が交わされているホットなテーマです。質問してくれましたように、木星は外から移動してきた土星の重力で、恒星への移動が止まり さらに反転して外側に動いたという有名な説もあります(グランドタックモデルと呼ばれる)。しかし、(私を含め)この説は間違えていると主張している研究者も沢山おり、現在まだ決着がついていません。

 

Q2:地球のような岩石惑星は地球のように全て巨大な磁石で磁力を持っていて、磁力線のおかげで大気が保たれている...という解釈であっていますか?水星や金星には地球のような大気がないので疑問に思いました。

A2:はい、惑星が持つ磁場も生命誕生には重要だという主張もあります。生命に有害な高エネルギーの電子や陽子が宇宙から地球や惑星に降り注がれていて、これらは紫外線よりもさらに危険です。地球の場合、磁場がこれら高エネルギー粒子の侵入を防いでいるおかげで、私達は安全に暮らせています。磁場がない惑星ではこの危険がありますが、海の中地中までは侵入しないので、海の生物は安全ですし、彗星等の内部に有機物を保存することもできます。

 

Q3:恒星のまわりをまわっていない自由浮遊惑星はどうやって見つけるのですか?

A3:講演で説明した重力レンズ法でいくつか見つけています。計画中のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、重力レンズ法で大量の自由浮遊惑星を見つけようとしています。

 

Q4:太陽系の惑星と、赤色矮星の惑星で違いはありますか?

A4:小さな赤色矮星のまわりには、巨大惑星はあまり見つかっていません。巨大惑星をつくるほどの原材料がなかったためだと考えられています。また、赤色矮星は太陽より暗いため、より近いところにハビタブルゾーンがあると話しましたが、赤色矮星の場合、紫外線や表面のフレアが激しく、ハビタブルゾーンが危険になっているかもしれないと危惧されています。また、赤色矮星の赤い光や赤外線では、植物は光合成が働かないのではと予想する研究者もいます。

 

Q5:恒星にはなぜ惑星ができるのか?

A5:質問ありがとうございます。私はそれを研究しています。誕生したばかりの星のまわりには、大量のガスや塵がまわっています。それらを原材料として惑星がつくられました。しかし、小さな塵からどのようにして惑星や小惑星などの天体がつくられたのかは、実は私たち研究者もよくわかっていません。惑星形成現場を望遠鏡で観測することで、この謎を解こうとしています。

 

Q6:惑星の大気の成分はどのようにして観測しているのでしょうか?

A6:惑星の大気から来る光のスペクトルを調べます。光にはいろいろな波長があり、波長ごとの光の強度の分布が光のスペクトルです。大気中に含まれる、各成分(各分子)は異なった特徴のスペクトルを示すので、そこから成分の割合を知ることができます。打ち上げに成功したJWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)による赤外線観測で、このような観測・分析が行われる予定です。

 

Q7:系外惑星の今後の観測は?

A7:これまでは、惑星の質量や軌道について主に調べられてきましたが、今後の観測では、惑星の大気が中心的な観測ターゲットとなっています。惑星の大気成分は生命が居住できる可能性と結びついているからです。JWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)やナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡、または計画中の次世代地上望遠鏡で詳細な観測がされる予定です。

 

Q8:今注目している系外惑星は?

Q9:地球に近い系外惑星への観測ロケットの予定は(直接観測)?

A8&9:これら2つの質問は一緒に答えます。

一番近くにあるプロキシマ・ケンタウリbが、ハビタブルゾーンにある惑星でもあり、注目です。ブレークスルー・スターショット計画という、超小型探査機を送り込もうという計画もあります。(技術的な問題で打ち上げまでまだ20年以上かかりそうですが。)惑星の大気の成分を調べるという面では、トランジット法で観測できるTRAPPIST-1の惑星が有力候補です。

 

Q10:スーパーアースはどんな惑星?

A10:地球より有意に重く、また地球質量の10倍よりは軽い惑星が、スーパーアースと呼ばれています。ハビタブルゾーンにあるものもいくつかあり注目されています。ただし、地球とどのくらい類似しているかはまだ不明です。

 

Q11:太陽がなかったらもともとの惑星って何度なの?

A11:恒星のまわりをまわっていない固体の自由浮遊惑星の表面は、非常に低温と考えられています。しかし、惑星自身の地熱の効果により、氷の表面の内側に液体の海がある可能性も示唆されています。

 

Q12:「自由浮遊惑星」は「惑星」と呼べるのか(惑星の定義は「恒星の周りを回っていること」だと思っていました)?

Q13:原始惑星系円盤以外で、惑星サイズの天体が形成されることはあるのか?

A12&13:これら2つの質問は一緒に回答します。

 褐色矮星より軽い天体で、恒星のまわりをまわってないものは、自由浮遊惑星と呼ばれていますが、恒星と同様に作られた可能性もあり、準褐色矮星と呼ぶべきだという意見もあります。一方、原始惑星系円盤内でつくられた惑星が、巨大惑星に跳ね飛ばされて、自由浮遊惑星となることも頻繁にあると考えられており、どちらの起源か判断するのが難しいので、どのような名前にするべきか明らかではありません。今後の課題でしょう。