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大西浩次さんからメッセージが届きました!

現在プレショーギャラリーで星景写真展「水の惑星」を開催している写真家・大西浩次さんからメッセージをいただきました。

大西さんは多忙をきわめる中、3月11日に天文台にご来館され、急きょお客様に展示解説をしてくださったり、自らポーズをとって写真撮影に応じてくださったり、夜には七北田公園でのベガ号観望会にまでご参加くださったり、時間の許す限り天文台を楽しみ親しみ、私たちに笑顔と感動を届けてくださいました。
oonishisan2.jpg写真展は29日まで。
美しい写真とともに、大西さんの温かいお人柄もぜひ感じてください。

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水の惑星によせて-大西浩次
oonishisan.jpg 
 私の最初の天体写真は1972年1月30日の皆既月食の写真。しかし、本格的に撮り始めたのは、大学生だった1986年10月18日の皆既月食。その頃、小さいカメラ1台でいったいどんな宇宙が表現できるだろうかと考えていた。そのとき、私の原風景として小さい頃に眺めた星空が、すでに無くなりつつあることに気づいた。そして、私は、この「星空」を今のうちに記録しなければいけないと考えた。そうして、仙台平野の東に広がる海岸線、特に、荒浜、岩沼、二の倉、吉田浜に良く出かけたものだった。日本海側で生まれ育った私にとって、太平洋の彼方から昇って来る星はあこがれの存在だったのだ。そして、実際に美しい光景が次々と展開していた。

 個展の準備をしていた、昨年2011年3月11日、東日本大震災が起きた。私としても、何か出来ないかと思い、急遽、4枚の写真を交換し、明石市立天文科学館での写真展「時空の彩」の一部として、「水の惑星」を展示した。神戸新聞に小さく掲載されたこの4枚の写真の話がきっかけとなり、その年の8月4日は、宮城県亘理町で「星を見る会」が開催されるに至った。そして今、この3月11日に、仙台市天文台で展示されていることを不思議な「縁」だと感じています。

 私が「記録」した22年まえの写真が、「記憶」となってしまったことは非常に残念な事です。しかし、この時の「記憶」が、また、みなさんの「記憶」と結び付く事が出来るなら、それは大変うれしいことでもあります。また、いつの日か、海岸線で希望の星を撮影できる日を待っています。この「記憶」とともに、この青き「水の惑星」地球に満身創痍で帰還した「はやぶさ」の写真も展示させていただきました。数々の困難を乗り超えてきた「はやぶさ」に、私たちは勇気と希望をもらったからです。最後に、東日本大震災で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げますと共に、今後の復興に、少しでもお役に立てる事が出来ると幸いです。

2012年3月
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oonishisan3.jpg水の惑星  大西浩次

仙台に住んでいたころ、美しい星空を求めて、仙台平野の東に広がる海岸線に時々でかけた。カメラや三脚など20kgほどをリュックに詰め込み、仙台駅から山下行きの最終電車に飛び乗る。浜吉田駅で降り、駅前の町並みを20分ほど歩くと防砂林が見えてくる。と同時に、波の音が聞こえてくる。この林を抜けて防潮堤にのぼると、目の前に太平洋が広がる。

地球の表面は、約70%が海で覆われている。しかし、地球の原材料には水が少なかった。事実、地球に含まれる水の量は、地球質量のわずか0.1%に過ぎず、木星型惑星などに比べて遙かに少ない。さらに、極めて限られた圧力や温度の範囲でしか、水が液体として惑星の表面に存在出来ない。それにもかかわらず、地球に40億年ほど前に海ができ、現在でも、その海を保ち続けている。まさに、地球は水の惑星なのだ。

「生命は海の中で誕生した」と考えられている。なぜなら、水が生命活動に不可欠であること、そして、生体中の元素組成が海水の組成に極めて似ていることからだ。海で誕生した生命が、38億年以上の歳月を掛けて進化し、現在に至っている。まさに海は生命のゆりかごと言えるだろう。

太平洋の彼方から昇って来る星空は美しい。潮風に当たりながら、砂浜を歩き、海と対峙していると、波の音が響くこの海岸線は、まさに「星空」を、いや、この「地球」を、五感のすべてを使って感じることが出来る特別な場所であった。2011年3月11日、この海岸を10 m以上の津波が襲い、防潮堤を乗り越え、3kmほど内陸まで進入した。多くの人々の命を奪い、家や田畑を流し去った。

地球のプレート運動は、山脈や火山を作り地震を引き起こしているだけでなく、炭素循環の中心的な原動力になっている。この炭素循環は、数百万年のスケールでの気温変動を安定化させ、我々の生命圏を持続可能にさせている。しかし、地球のタイムスケールより短い私たちの人生にとっては、このプレート運動は、時に絶望的な悲劇も生み出している。

「理科の探検」RIKATAN連載”Sense of Universe” 2011年6月号の記事原稿より改変 (2012年3月)