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皆既日食観測レポートvol.3 ~中国・安吉編~

s00.jpg

皆既日食の観測地点は上海から西に進むこと約200km、淅江省安吉県にある大竹海渡暇村。ここは中国人が行くリゾート地らしく、自然が豊かで何もないところだそうだ。

到着してみるとその説明通り、山間部の農村地帯といった感じの場所であった。
安吉は杭州の北西50kmの位置にあるため、7月22日の天気は杭州とほぼ同じだと思われる。しかし、空の状態は杭州に比べて若干良かったようである。

うす雲を通してではあるが第1接食から第4接触まで全て見ることができた。

以下、そのレポートである。

 

観測地点の位置情報:東経119.6791、北緯30.528、海抜80m、

観測地での日食経過時刻は下記の通り。
・第1接食(食の始まり)08時20分57秒
・第2接食(皆既開始)09時33分08秒
・最大食時刻 09時36分57秒
・第3接食(皆既終了)09時38分55秒
・第4接触(食の終わり)10時58分07秒

 

(注:撮影時刻はデジカメに記録されている時刻データ(中国時間)である。デジカメの時刻は日本を出発するときに電波時計で合わせてあるが±1秒程度の誤差があると思われる。)

  

「第1接食直後の太陽(食分0.00)」 s02.jpg

s03.jpg2009.7.22 08:21:06  BORG60  F5.4  NIKON D90  1/250  D5フィルター (トリミング)


 第1接触予定時刻10秒後に撮影した写真。太陽の右端が少しだけ欠けていることが分かる。そこに月があることを実感した瞬間であった。この時は天気が良く、薄雲はあったが空はきれいに晴れていた。しかしこの直後から少しずつ雲が厚くなっていく。

 

「欠け始めから15分後の太陽(食分0.21)」

s04.jpg 写真では右側から欠けていくように見えるが、実際は太陽のほぼ真上から欠けていった。この写真を90度左回転すると実際の様子に近くなる。この時の太陽の方位は東、高度は約50度、気温は30.3度であった。暑い…。
 食分0.2ほどの部分食は仙台でも何度か見ているので、おなじみの部分食といった感じだ。この時は天気が良くなることだけを願っていた。

 

 08:35:45  BORG60 F5.4 NIKON D90 1/200 D5フィルター

 

「欠け始めから36分後の太陽(食分0.51)」
s05.jpg

 8時45分頃、雲が厚くなり太陽が一時全く見えなくなる。このまま太陽は二度と姿を現さないのでは…、と不安がよぎるが、8時55分頃から雲間に太陽が見えるようになる。しかし、この雲が晴れることはなく、この状態がずっと続く。
 食分0.51は、ちょうど半分欠けているかというとそうではない。太陽の直径の半分まで月が達している状態なので見かけ上は3割程度しか欠けてないような感じだ。

 

 08:57:09  BORG60 F5.4 NIKON D90 1/10 フィルターなし

 

「欠け始めから45分後の太陽(食分0.64)」
s06.jpg

 食分が0.6を越えると明らかに普通の太陽ではなくなる。太陽が月に浸食されていく様子を見ていると、古代人でなくても何か不吉なことが起きるのでは…と思ってしまう。
 こんなに欠けていても肉眼で見る太陽の明るさはいつもと変わらない。ひょっとしたら日食が起きていることを知らない人は太陽が欠けていることに気づかないのでないだろうか。

 

 

09:06:33  BORG60 F5.4 NIKON D90 1/100 D5フィルター

 

「欠け始めから58分後の太陽(食分0.81)皆既15分前」
s07.jpg

 この頃から周りの景色に変化が現れる。夏の日の夕暮れとも違う、どこかセピア色に似た感じの色合いに景色が変化していく。この様子は今まで経験したことのないとても不思議なものである。
 雲は以前かかっている。幸い太陽を見えなくするほどの厚さではないので、このまま太陽が見え続けることを願う。


 

09:18:59  BORG60 F5.4 NIKON D90 1/40 D5フィルター

 

「欠け始めから64分後の太陽(食分0.90)皆既8分前」
s08.jpg

 この頃から生き物の行動に変化が現れる。鳥がギャーギャーと鳴いてホテルの屋根に集まってきた。さっきまでたくさん飛んでいたトンボは一匹も見あたらなくなる。人間の様子に変化はまだない。
 フィルターを通してみる太陽はかなり細くなった。とてもきれいである。


 

 09:25:36  BORG60 F5.4 NIKON D90 1/8 D5フィルター

 

「欠け始めから71分後の太陽(食分0.99)皆既1分前」s09.jpg

 太陽が糸のように細くなる。辺りは薄暗くなってきた。さっきまで騒いでいた鳥も静かになり、いつの間にか周りには街灯がついている。この時、振り返って上空を見ると頭の上におおいかぶさってくる月の影が見えた。いよいよだ!
 皆既1分前だというのに肉眼で見る太陽は直視できないほどまぶしい。太陽光の強さを感じた。その光が徐々に消える…。第2接触だ。

 

09:32:00  BORG60 F5.4 NIKON D90 1/5 D5フィルター

 

 「皆既中の太陽~第3接食~」 

 この動画は皆既開始3分後から第3接触直後までのものである。ご覧になると分かるが、雲を通してみているためコロナは内部コロナの輝きだけしか見えない。第2接触の時は雲が多かったためダイヤモンドリングは全く見えず、突然空に黒い太陽が現れた。第3接触の時は雲が薄くなりダイヤモンドリングがかろうじて見えた。映像では一瞬だが肉眼で見るダイヤモンドリングはもっと長く見えて、そしてこの上なく美しいものであった。

 

「彩層とプロミネンス」

s10.jpg これは動画からキャプチャーした静止画を33枚コンポジットしたものである。3接触直前に彩層とプロミネンスが見えた。双眼鏡で見る彩層とプロミネンスは紅色で何とも言えない美しさがあった。

 

 

 

 

 

「皆既中のコロナ」 

s11.jpg こちらは画像処理で浮かび上がったコロナである。長時間露出をかけると雲は流れるが、コロナは見かけ上静止しているので画像処理をすることで見えるようになる。太陽の北極と南極から筋状に伸びているコロナが太陽活動の極小期に現れる「ポーラープリューム(極域羽状構造)」だ。左右に広がっているコロナを「ストリーマー(流線)」と言うのだが、雲の流れと重なってよく分からない。

  

09:35:00  BORG60 F5.4 NIKON D90 4sec 画像処理

 

「中国安吉の皆既日食」  

s12.jpg

 NIKON AF NIKKOR 28mm F2.8    NIKON D50  絞りF14   露出1/200~1/60, 8sec 

 

これは日食経過の様子をほぼ10分間隔で撮影した写真である。2回ほど雲に阻まれ撮影できなかったが、悪天候であることを考えるとこれだけ撮影できたのは奇跡に近いかもしれない。左下には皆既中の夕焼け雲が少しだけ写っている。皆既中の写真を撮影した時刻は9時36分57秒である、偶然だがこの時刻は最大食時刻とピッタリ合っていた。部分食は雲の厚さが刻一刻と変わるので露出の設定が難しかった。


 「第4接触直前の太陽」 

s13.jpg

 あと5分ほどで日食が終わる。皮肉にも天気が良くなり青空が見えてきた。気温も40度に達している。太陽は本来のまぶしさを取り戻したようだ。
 今回は雲があったため、予定していた地球照の撮影、本影錐の確認、ダイヤモンドリングの撮影、コロナの撮影、シャドーバンドの確認など多くのことができなかったが十分堪能することができた。皆既日食は想像を遙かに超えるすばらしい天体ショーであった。 

 

 10:52:28  BORG60 F5.4 NIKON D90 1/320 D5フィルター

                                                                                                                                佐々木(靖)