あの忌まわしい3月11日の東日本大震災!
それによって1.3mひとみ望遠鏡も大きな被害を受けてしまいました。
あの日のあの時間、私は3階のひとみ望遠鏡の制御室にいました。
携帯電話の「緊急地震速報」がけたたましく鳴り、
直感的に「大地震が来る」と察したのです。
案の定、数秒後から大きな東西の揺れ、今までの遭遇したことのない大きな揺れ!
なすすべがない、ただ、目の前のモニターを押さえつけるのが精一杯。
ふっと頭の中をよぎった「ここでわが人生は終わりか・・・」と。
おおきな揺れが収まり、観測室の1.3mひとみ望遠鏡のもとに。
外見上は異常は見つかりませんでした。
しかし、被害は甚大!
ひとみ望遠鏡水平回転部付近でのズレが判明したのである。
幸いなことに製作メーカーの社長さんが「仙台は地震が多いから転倒防止の
ストッパーをつけて置くように」との指示が設計者にあったとのこと。
これが幸いして転倒が免れたのでした。
その後、ひとみ望遠鏡はすべて解体され、測定器によって部品検査が行われ、
再度組み立てられて9月下旬に復旧工事が完了しました。
9月下旬、観測上の使用許可が出て最初に何をとろうかと考えていたときです。
ひとみ望遠鏡制御画面の中央には、お隣の銀河M31の表示がありました。
ためらいも無くその天体を導入、冷却CCDカメラの撮影開始ボタンをクリックしました。
出来た画像はそのままで公開は出来ません。
ダークとフラット処理を経ないときれいな画像にはならないのです。
しかし、一度解体されているので3月11日前の画像処理基本データも変わってしまっています。
厄介なことですが、また一からやり直しなのです。
その作業を経て出来上がったM31の写真を見ていただきましょう。
出来上がった白黒の写真に着色してみました。
この中に新星が現れているのではないかと隅々まで精査してしまいました。
これから画像処理基本データ取得やいろいろな作業が待ち受けています。
いろいろと大変ですが、気持ちを新たにしてひとみ望遠鏡と向き合って行くことにしましょう。
小石川正弘
■撮影データ
撮 影 日:2011年9月26日23時18分20秒から60秒露光
使用機材:1.3mひとみ望遠鏡カセグレン焦点 f4.85
冷却CCDカメラのCCD2側の画像、冷却温度-97℃