台長コラム ときどき土佐日記

先日、仙台市青葉区大町、西公園の近くにある「斉藤報恩会博物館・ポケットミュージアム」に行ってきました。ポケットミュージアムの名の通り、こじんまりしたワンルームの博物館ですが、それだけ身近に親しみのわくミュージアムです。

以前、仙台市青葉区本町に「齋藤報恩会自然史博物館」がありましたが、残念ながら平成21年3月に閉館し、平成21年7月に縮小してこちらに移転開館したものです。恐竜の骨格標本、宮城県産出の化石や鉱物、絶滅が危惧されている鳥類の剥製、さらに財団法人斎藤報恩会が助成した研究の成果などがコンパクトに展示されています。
このミュージアムの目玉はなんといっても、肉食恐竜アロザウルスの全身骨格標本です。レプリカですが、なかなかの迫力です。実は、仙台では大型肉食恐竜の全身骨格標本はここでしか見られないので貴重な存在です。

博物館の展示室に入るとアロザウルスの大きな顔・頭骨が迎えてくれます。恐竜の顔があまりに間近にあるので、今にも顔をなめられそう、否、一口にパクッとされそうです。下に「手を触れてはいけません」という「表示」がありますが、僕たちも「なめてはいけません」・「恐竜の食べ物ではありません」という表示を首に下げたくなります。

でもほんとうは心配いらないのです。実は、恐竜は6500万年前に突然絶滅し、人類はそれよりずっと後の数百万年前に出現したとされ、幸か不幸か全く時代が異なり両者が出会うことはなかったのです。

恐竜は宇宙人と並ぶSF(サイエンスフィクション)の定番ですが、自然史にはなかった人類との出会いをどのように仕立てるかが重要なポイントです。僕は幼少の頃からSFが好きで、シャーロック・ホームズの冒険でお馴染のコナン・ドイル著『失われた世界』や映画化され大ヒットしたマイケル・クライトン著『ジュラシックパーク』など「恐竜モノ」を大いに楽しんだのですが、いかに人間の時代に恐竜を出現させ、人間との出会いを演出するかが最も興味のあるところでした。

フィクションではなく、科学的・自然史的に興味深いことは恐竜絶滅の原因です。様々な説がありましたが、現在最も有力な説が巨大隕石の衝突です。様々な状況証拠が集められ、隕石が落下した場所も特定されています。巨大隕石の衝突による恐竜絶滅は、僕も講義や講演でよく取り上げるのですが、科学的に説明ができるようになりました。

巨大隕石の衝突は恐竜にとって大変不幸な出来事でした。しかし、恐竜には申し訳ないのですが、それが人類の祖先に幸運をもたらしたということです。人類の祖先に当たる哺乳類は恐竜の時代に出現したそうですが、小型で、恐竜におびえながらひっそりと暮らしていました。哺乳類は環境の適応能力が優れていたので、絶滅によって恐竜の脅威がなくなると、恐竜に代わって繁栄・進化し、やがて人類が出現したというのです。ということで、恐竜も隕石も我々の存在と深くつながっているということになりますが、自然史の面白いところです。
 
ところで、博物館に「齋藤報恩会」という歴史の教科書の中から出てきたような名前が付いていますが、事実、斎藤報恩会は歴史に名を残す事業を行ってきた財団なのです。宮城県の斎藤家第9代当主、斎藤善右衛門が大正12年(1923年)に私財を投じて設立し、学術研究教育振興を行ったものです。当時このような財団は前例がなく、その事業内容はユニークで先進的なものでした。財団の活動は今も続けられていますが、そのような財団の歴史も展示の中にうかがうことができます。
 
斎藤報恩会博物館・ポケットミュージアム
〒980-0804 仙台市青葉区大町2丁目10番14号 仙台パークサイドビル2F
TEL:022-262-5506
http://www.saitoho-on.com